男系・女系は「輸入的な概念」?
先頃、神社新報編集部『皇室典範改正問題と神道人の課題』が刊行された。ブックレットの体裁ながら周到かつ公正な力作。「神道人」だけでなく、広く読まれるべき良書だろう。例えば、次のような言及も。
「(明治の皇室典範の起草に当たった)井上毅(こわし)は、確かに『姓(せい)』は父系で継承されるべきとの観念を前提としてゐた。だが…本来『姓』を与へる存在である『姓の無い』我が国の天皇が拘束されねばならぬ原理なのかどうか疑問なしとしない。
古制に詳しい元老院内の国学者・横山由清(よしきよ)も『男統』が絶えた時には『女統』を認める案を考へてゐた(「継嗣考」)。また、『男系・女系』なる語も明治十年代半ばまでは使用されず、専ら欧州国憲の訳語『男統・女統』が用ゐられた。これらは前近代には『皇統』を論ずる文脈で使はれてをらず、欧州輸入的な概念の色彩が濃い」
注目すべき指摘だ。