「側室」に触れない男系論
国内最大の保守団体、日本会議。
その事務局を主に担っておられるのは日本協議会・日本青年協議会だ。両協議会の皆さんとは長年、お付き合いをさせて戴いている。どなたも真面目で、尊敬すべき方々が多い。
両協議会の機関誌が『祖国と青年』。
薄い冊子ながら、皇室関係の充実した記事が特長だ。他誌を凌駕する貴重な記事を、いくつも載せて来ている。古くなった雑誌をじゃんじゃん棄てている私も、同誌のバックナンバーは多数、保存している。
その3月号に「安定的な皇位継承をめぐる論点」という記事が載っている。
全体で80ページの雑誌なのに22ページもこの記事に充てている。力のこもった企画だ。しかし、これまで男系継承を支えて来た「側室」「非嫡出(庶出)」について、全く触れておられない。
これは意外。
過去の実例を見ると、天皇の正妻に当たる方の平均して3人又は2人に1人(約35、4%)は男子を生んでおられない。それをカバーして来たのが、側室の存在であり、非嫡出による継承。実際に、歴代天皇の約半数は非嫡出だった。
傍系の宮家の継承でも実情は大きく違わない。しばしば、直系の男系継承を傍系が支えた、と言われる。しかし、その傍系の宮家も「側室」と「非嫡出」によって支えられて来た。その可能性が既に“失われた”冷厳な事実と、真正面から向き合わない男系論は、残念ながら説得力を持ち得ない。
素朴に「旧皇族(11宮家)の男系男子孫に皇族になっていただくという選択肢がある」(“11宮家”のうち既にいくつも断絶された)と主張されているのは、2月10日の菅官房長官の答弁よりも前に書かれた原稿なのだろうか。