世論の専制
『新しい公民教科書』(自由社)の本領がよく表れている記事を紹介しておく。
「世論の専制」と題したコラム(「ミニ知識」というコーナー)だ。
「政治権力のみならず、社会も、人々の表現の自由を抑圧することがある。
大多数の人の考え方と異なる少数意見の持ち主は、発言の機会を封じられ、沈黙を強いられることがある。
今日のマスメディアの高度の発達は、皮肉にもこのような世論の専制(または多数者の専制)を強める傾向がある。
このような表現の自由の抑圧の問題は、抑圧された当人の苦痛だけでなく、批判的な意見や異質な考え方の多様な表明が抑圧されることによって、社会全体が画一化し、剛直化してしまい、社会の自由で健全な発達が止められてしまうことにある。
福澤諭吉は『文明論之(の)概略』において、『人々が信じていることには実は間違いないが多い』『異説妄説こそが科学や思想を発展させた』と指摘し、人々が心を広く開いて公正に語り合い、議論し合うことの重要さを説いた」
目の前の新型肺炎を巡る社会状況にも当てはまる指摘だろう。
それにしても、教科書にこんなに鋭い指摘を載せたのは、さすが。