神社・寺院と「持続化給付金」
私も役員を務める「政教関係を正す会」(大原康男会長)が発行している「R&R(Research and Report)」348号は「新型コロナ禍と宗教法人」というタイトル。
コロナ禍(より正確には新型コロナ“恐怖症”禍か)で前年同月比50%以上の減収となった中小企業などを対象に、経済産業省が所管となって支給される「持続化給付金」が、神社や寺院などにも行き渡るか、という問題を取り上げている。
「本件は5月27日の自民党総務会でも、宗教団体への公金支出を禁じた憲法89条に違反する疑いがあるとの意見が出て、議論が紛糾、政府でも『与党内の調整ができていない』ことを理由に同日の閣議から除外されました。
自民党の鈴木俊一総務会長は、今後も公明党との間で調整を進めてゆく考えを示していますが、指定文化財の保護や私学助成金のような公金支出でないだけに、議論が纏まらない可能性もあります。
しかしながら、改めて津地鎮祭最高裁判決の示した『目的効果基準』に即して、この問題を考えてみますと、持続化給付金の支出の目的は『感染症の拡大によって特に大きな影響を受ける事業者の支援』ですから、国の経済政策の一環として実施される世俗的なものであって、かつ他の法人の事業と同様に、単に『事業の継続』にとどまるものです。
また宗教法人全体を対象としますので、その効果も特定宗教だけを援助したり、他宗教を圧迫したりするものでないことは明白です。
なお、憲法14条の法の下の平等という観点でいえば、たとえば、大きな火災が発生して公機関である消防署が消火活動を行おうとする際に、対象物の中に神社仏閣が含まれているからといって、特別な理由もなく、神社仏閣についてのみ消火活動を除外することはないことと同様です。
実際に持続化給付金の対象に宗教法人が含まれるかどうかは、微妙な情勢ですが、そもそも各地の社寺は、伝統文化の護持とともにコミュニティの維持や祭礼などを通じて地域経済の活性化にも寄与していますので、単なる政教分離原則のみで考えるのではなく、先に掲げた『目的効果基準』に即して判断するとしても、憲法89条の埒外(らちがい)の問題として考えるべきでしょう」
これは当然、宗教法人だからという“だけ”の理由で、差別されるべきではないだろう。