皇室典範を改正しなければ将来への皇位の安定継承は望み難い。その典範の改正手続きについて、明治の典範には以下のような規定があった(62条)。
「将来此(こ)ノ典範ノ条項ヲ改正シ又(また)ハ増補スヘキノ必要アルニ当(あたり)テハ皇族会議(皇“室”会議ではない!)及(および)枢密顧問ニ諮詢(しじゅん)シテ之(これ)ヲ勅定(ちょくじょう)スヘシ」
皇室自律主義により、天皇の「勅定」とされていた。皇室典範の性格を考えると、こうした手順が最も自然で妥当だろう。ところが、今の典範はどうか。
実は制度上、(甚だ不合理かつ非人道的とさえ言い得るが)当事者である天皇および皇族方の関与を全面的に排除しているのだ。この点については以前、ある衛星放送の番組で、かねて尊敬する憲法学者の方と、以下のようなやり取りをした。
憲法学者「天皇は憲法4条によって国政に関する権能を否定されている。しかし、皇室典範の中身には国政に関わる事項は一切、無い。だから、天皇や皇族が皇室典範の在り方に言及されても、憲法上、何ら問題にはならない」
私「確かに典範には国政事項は含まれていない。しかし、憲法2条には『国会の議決した皇室典範』と明記している。そのこと自体の是非とは別に、憲法がハッキリと典範改正を国会マターと規定している以上、国会で審議・決定すべき事項に、天皇や皇族が直接、発言されることは、やはり4条との関わりで問題視されてしまう」
憲法学者「…」
今の憲法が国会主義を採用している限り、残念ながら、上述のように解釈せざるを得ないだろう。ならば、政府、国会、国民は、いかにすべきか。天皇陛下のご真意がいかなるものかを、謙虚かつ真剣に探りつつ、自分達の責任において、叡智を結集して最善の改正を成し遂げる他ない。
国民の責任は大きい。