帝国憲法の第2条には、皇位の継承について、以下の規定があった。
「皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依(よ)リ皇男子孫之(これ)ヲ継承ス」これに対し、現憲法の同条は次の通り。
「皇位は世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」これらの条文を比べると、2点、明確な違いを指摘できる。
(1)前者の場合、皇室典範への議会の関与はない。
これに対し、後者では国会が典範を「議決」する。
(2)前者が皇位の継承資格を男系男子(皇男子孫)に限定しているのに対し、後者は「世襲」とするのみで、そのような限定は設けていない。
(1)は、皇室自律主義と国会中心主義の対立だ。
(2)は、明治時代に採用された「男系男子」という縛りを、今の憲法が“除外”したことを意味する。
憲法は世襲、つまり「皇統」による継承だけを求めている。
「男系男子」という縛りは、法的には(憲法と同等だった)明治の典範とは異なり、(憲法より下位の)「法律」に位置付け直された今の典範の規定に、根拠を持つに過ぎない。
従って、典範の改正によって、「男系男子」の限定を変更することが可能というのが、政府見解でも学界の多数説でも、一致した立場だ。
ごく当たり前の前提知識ながら、意外に見落とされがちなので、念の為に。