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執筆者の写真高森明勅

傍系主義?

更新日:2021年1月21日

傍系主義?

皇位継承の「男系維持」を唱える論者の中には、時折(又はしばしば)突飛な発言をされるケースを見かける。先頃、「傍系主義」を標榜しておられる方がいて、驚いた。


にわかに真意を図りがたいものの、少なくとも、現在の皇室典範にも採用されている「直系主義」へのアンチの表明だろう。直系主義というのは、皇位継承の順序として、先ずは直系の皇族を優先する。次にもし直系の該当者が不在なら、傍系から血縁の近さに従って継承者を決めて行く。そういうルールだ。


先に指摘した「親から子(又は孫)へ直系によって受け継がれてこそ、天皇という地位(皇位)と皇室の血統(皇統)の継承性・連続性を、素直に実感しやすい、という心的事実」に照らして、極めて真っ当なルールだろう。


ところが、傍系主義とはどういうことか。もし直系主義の正反対なら、天皇に直系のお子様がおられても、血縁が“遠い”順番に継承者を決めて行く、という考え方になる。傍系「主義」という以上、額面通りに受け取れば、“より”傍系である皇族を優先するのが、本来の立場でなければならないからだ。


しかし、いくら何でも非常識・不合理過ぎる。ならば、とにかく直系の皇族は後回しにして、傍系でも天皇との血縁の近い順に継承者を決めるのか。しかし、血縁の「近さ」を重んじるなら、どんなに近い傍系の皇族より、直系の皇族が“もっと”近いに決まっている。


だったら何故、直系をことさら後回しにする必要があるのか。「傍系」主義というのは、考えれば考えるほど分からなくなる。勿論、そんな「主義」が制度として採用されることは(国会に最低限の理性が残っている限り)、100%あり得ない。


それとも、直系主義について、直系に“しか”継承資格を認めないと早合点して、傍系にも継承資格を認めるという意味で、傍系主義を唱えておられるのか。それはいくら何でも、無知と誤解の程度が甚(はなは)だし過ぎるのではあるまいか。


傍系継承は過去にも多くの実例があったし、それを排除する規範が登場したこともない。

ただ、天皇との血縁が遠い場合、それだけ「継承」「連続」の実感が薄れがちで、観念的・抽象的な受け止め方に傾くのは免れない。特に現代のような時代において、それは一層、権威や求心力、統合性にも関わって来かねない。


だからこそ、これまで以上に、極力、直系継承を大切にしなければならないという結論になる。


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