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執筆者の写真高森明勅

倉持弁護士、初の単著

更新日:2021年5月14日


わが“戦友”倉持麟太郎弁護士。この度、初めて単独の著書を刊行された。それが『リベラルの敵はリベラルにあり』(ちくま新書)。先日、ご恵送戴いた。


つい、リベラリズム研究の権威、井上達夫氏の著書のタイトルを連想してしまう。リベラルな価値の普遍性を確信するが故に、リベラル勢力の情けない現状に、“理性的な”苛立(いらだ)ちを抑えられない。そんな気分がうまく表現されている。


「政治を乗りこなす」為の多様な論点を、コンパクトに詰め込んだ本書は、前半(1~4章)が理論編、後半(5~6章)が実践編という構成だ。この両者を、“共に”高いレベルでカバーできるところに、倉持氏の稀有(けう)な才能を認めることができる。理論家は、しばしば自分が築き上げた観念の城(本書の表現では「理論の空中楼閣」)に閉じ籠もりがち。


一方、いわゆる実践家は、驚くほど理論的な見通しを欠落させて、平気だったりする。

本書は、バリバリの実践家による、現代日本の政治に対する、明快かつ鋭利な理論的批判(本人のブログに時折見られた難解さはすっかり影を潜めている!)。そこに斬新な魅力がある。


保守・リベラルという立場の違いを超えて、政治の「再生」を願う全ての人々にとって、恐らく必読の1冊になるのではないか。本書中には、上皇陛下のご譲位を可能にした法整備を巡る動きについても、取り上げられている。その取り組みに、直接関与した人物による簡潔な要約として、興味深い。


「小林よしのり氏主催の『ゴー宣道場』からの誘いを受け議論に参加することとなった…。

その場では、皇室研究家の高森明勅氏を中心に、譲位制度についての極めて高度かつ現実的な解決策が議論されていた。同時に私は、『このまま議論だけしていても実現しない。でも条文化して世に問えば、実現の芽は出てくる』と確信した。


…具体的行動に結び付けることなしに政治は動かない。

私はすぐに高森氏にけしかけて、皇室典範改正案の要綱を出してもらい、議論しながら条文案として仕上げていった。この提案を、当時民進党の野田佳彦議員や馬淵澄夫議員、山尾志桜里議員に見てもらったところ、すぐさま問題意識を共有して動いてくれる運びとなった。


結果、政府の有識者会議よりも先んじて、同年12月21日、民進党の『中間論点整理』が発表され、『譲位を恒常的に制度化する皇室典範改正』という方向性が大きく報道され、天皇の公務軽減でお茶を濁すという政府の既定路線は変更を迫られることになる。最終的に成立した改正法は、残念ながら特例法にとどまったものの、それでも譲位が可能になり、高森氏が示した譲位に欠かせない三つの要件はほぼそのまま特例法に組み込まれた。


森友・加計学園問題が発覚する前の安倍一強全盛期において、皇位をめぐる極めて重要な法案で、野党側から議論をリードし成果を得たのである。衆議院法制局のサポートも得つつ、野党側から、国民の気持ちに沿う建設的な提案を提示したからこその成果であったと思う」


―少し“しょった”言い方になるが、あの時に、倉持氏と私の出会いが無ければ、事態の展開は違っていた可能性があるのではないか、とも思う。「けしかけて」くれた同氏に感謝。


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