皇位の安定継承を目指す制度改正を巡って、“旧宮家”案は既に政府の選択肢から外されているようだ。
男系論者の間からも、旧宮家系国民男性に皇籍取得をお願いするのは「特攻隊に志願して戴くようなもの」という指摘がある位だから、政府高官が「グロテスク」と感じるのもやむを得ないかも知れない。
そもそも、「男系男子」という“縛り”を維持したままでは、万が一、何人か旧宮家系男性の皇籍取得が可能になったとしても、安定的な皇位継承には繋がらない。
しかし、政府が旧宮家案を排除しても、油断はできない。真っ当な解決策を取り上げるとは限らないからだ。それどころか、政府のこれまでの国会での答弁を少し詳しく分析すると、警戒が必要なことが分かる。
①「皇族数の減少など」については「先延ばしすることはできない」としつつ、一方、②「安定的な皇位の継承を維持する」為の取り組みについては「極めて重要な問題」と述べるにとどめている(平成31年3月13日、参院予算委員会での安倍首相〔当時〕の答弁)。
これは、ご譲位を可能にした特例法の附帯決議の趣旨(①②共に「先延ばしすることはできない」とした)を、巧妙に歪(ゆが)めるものだ。
この答弁からは、当面、内親王方のご結婚によって皇族数が減少するのを、“ごく限られた期間”手当てするだけ、という姑息(こそく)な話になってしまいかねない。
具体的には、一代限りの「女性宮家」というプランだろう。しかし、それは“目眩(くら)まし”に過ぎない。「男系男子」という縛り自体の見直しに手を着けなければ、女性宮家の当主や女性宮家のお子様が即位することは出来ない。それでは一体、何の為の女性宮家なのか分からない。当事者の方々に対しても、非礼極まる。
そんな目先だけの“数合わせ”のような女性宮家ならば、むしろこれまで通り、ご結婚と共に国民の仲間入りをされて、自由にお暮らしになって戴くべきだろう。くれぐれも要注意。