「旧宮家案」否定の国会答弁
平成31年3月20日、参院財政金融委員会で、国民民主党の大塚耕平議員と当時の安倍晋三首相との間で、次のようなやり取りがあった。
大塚議員「総理は戦後政治の総決算ということを何度もおっしゃって、もう6年も総理を務めておられる。…しかし、戦後政治の総決算というならば…GHQの指示に基づいて11宮家と26人の(男性)皇族の方が皇籍離脱をしたという、これをこのままにしておいて本当に戦後政治の総決算ができるというふうにお考えですか」
安倍前首相
「皇籍を離脱された方々はもう既に、これは…70年以上前の出来事でございますから、今は言わば民間人としての生活を営んでおられるというふうに承知をしているわけでございます。それを私自身がまたGHQの決定を覆(くつがえ)すということは全く考えていないわけでございます。…同時に、この安定的な皇位の継承を維持することは国家の基本に係る極めて重大な問題であると考えておりまして、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行う必要があると、このように考えております」
大塚議員
「…皇籍離脱をされた旧宮家の皆様に対して、戦後政治の総決算の観点から法的な工夫をするということも皇位の安定継承の選択肢の1つだというふうに理解してよろしいでしょうか」
安倍前首相
「…旧宮家の皇籍復帰等々も含めた様々な議論があることは承知しておりますが…国民のコンセンサスを得ることも必要であり、十分な分析、検討と慎重な手続(つづき)が必要であると考えております。これは、皇位の継承について、皇籍の復帰ではなく皇位の継承についてそういう考えで進めてまいりたいと考えております」
この答弁によって、「旧宮家案」は既に政府の「選択肢」から外れていることが、分かる。
しかも、男系継承の「重み“など”を踏まえながら」、しかし「GHQの決定を覆すということは全く考えていない」、つまり旧宮家案は採用しない(!)というロジックが、すっかり明らかな文脈になっていて、面白い。
特に、男系派にとって、自分達の“最大の支え”と思われていた安倍氏が、国会という最も公式な場で、他ならぬ首相として、誤解の余地なく明確に否定した、という事実が重要だろう
(質問者の大塚氏にとってはとんだヤブヘビだったかも知れないが)。