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執筆者の写真高森明勅

「皇女」案は一先ず取り下げ?

更新日:2021年1月24日


 「皇女」案は一先ず取り下げ?

政府は、無理で非礼な(しかも無知丸出し)の「皇女」制度案に“すり替える”ことで、皇位の安定継承への検討という、上皇陛下のご譲位を可能にした特例法が成立した際の、国会との大切な約束(附帯決議)をホゴにしようとしている。


しかし、同案に対して野党をはじめ各方面からの批判が早々と相次ぎ、闇雲(やみくも)に前に進めるのが難しくなっている。更に大島理森衆院議長からも、それに“釘(くぎ)”を刺すような発言が、飛び出した。


先ず、時事通信が大島議長へのインタビューを配信(12月11日、7時12分)。


そこでは、皇位の安定継承について「(これ以上、先延ばししないで)菅内閣で解決していただくのが良いのでは」との、同議長の見解が示されている。これは、“名指し”こそしていないが、安定継承とは無縁(!)な「皇女」案への、違和感の表明でもあろう。


加えて、11日の記者会見でも「(附帯決議の経緯をよく知っている)菅内閣のもとでこの問題に、国民の理解と共感を得られる結論が出ればいいな、こういう思いでいる」


「女性宮家の創設などについて、まずは政府で粛々と検討に入ってもらいたい」などと述べられた(日テレNEWS24、同日21時23分配信)。


ー政府側が、できれば年内にでもゴマカシの「皇女」案を報告しようとしていた当の大島議長本人が、絶妙なタイミングで以上のような発言を立て続けにされた。これは、衆院議長として、政府に対し、国会との重い約束を誠実に果たすよう、強く求めたものに他ならないだろう。


この発言は勿論(もちろん)、同氏自身の見識による一方、「皇女」案について、野党の党首が(玉木雄一郎国民民主党代表→枝野幸男立憲民主党代表と)相次いで批判した事実も、小さくない影響を及ぼしているはすだ(そのキッカケは11月25日の我々の緊急シンポジウムだったと言えるかも知れない)。


…と書いていたら、政府が皇位の安定継承の在り方を検討する有識者会議の設置を検討しているとの報道に接した(産経新聞、同22時42分配信)。これは事実上、「皇女」案を一旦、取り下げることを意味するだろう。もとより、有識者会議が設置されても、決して油断はできない。


上皇陛下のご譲位を可能にした法整備の時の経過を振り返ると、有識者会議が迷走する可能性も十分、考えられる。或いは、政府の思惑(おもわく)をカムフラージュする“隠れ蓑(みの)”としてだけ、機能する恐れも否定できない。その場合は、政府に任せないで、特例法の時と同じように、国会の全ての政党・会派が一堂に会して、慎重かつ丁寧に合意を図る必要があるだろう。


しかし取り敢えず、政府の「皇女」案は一先ず、押し戻せたのかも知れない。実は私自身、11日に別々のルートから、2つの情報を得ていた。

①某テレビ局(敢えて局名は出さない)が「皇女」案について内閣に質問書を出したら、「検討していない」との回答だった。

②宮内庁記者クラブ(宮内記者会)界隈では、政府が「皇女」案を既に取り下げた、という話が出回っている。


これらも勘案して、「皇女」案は暫く“お蔵入り”だろうか。

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