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執筆者の写真高森明勅

大正天皇例祭

更新日:2021年1月24日


大正天皇例祭

12月25日は大正天皇例祭。大正15年の同日、大正天皇が崩御(ほうぎょ)された。なので毎年、宮中三殿の皇霊殿にて、同祭が執り行われる。小祭だから、普通なら天皇と皇太子(今は皇嗣)だけのご奉仕。


しかし、「例祭」の場合、他の皇族方もお加わりになる。ご先祖への丁重な追慕のお気持ちからだろう。東京・八王子市の武蔵陵墓地(むさしりようぼち)にある大正天皇の御陵(ごりょう)、多摩陵(たまのみささぎ)でも祭典が行われる。


大正天皇の御製(ぎょせい)は繊細で格調の高いものが多い。その方面の才能においては「近代の3人の天皇の中で、随一の力を持っていられた」(岡野弘彦氏)とされる。ここでは、これまでに知られている最後の御作、大正10年の「社頭暁」と題された一首を、謹んで掲げさせて戴く(同年11月25日に摂政が立てられた)。


神まつる

わが白妙(しろたえ)の

袖(そで)の上(へ)に

かつうす(薄)れゆく

みあかし(御灯)のかげ(影)


皇室の恒例祭祀の中でも特に大切な、新嘗祭(にいなめさい)でのご感慨を詠(よ)まれていた。この御製については、歌人の水原紫苑(しおん)氏が以下のように述べておられる。


「神をまつる天皇の白い衣の袖の上に、暗いうちはあかあかと輝いていた灯明の光が、暁(あかつき)になって薄れてゆくという、痛いほど鋭利な感覚である。実に微細なうつろいさえ、神に向かう魂に刻まないではいられない作者なのである。その傷つきやすい心は詩歌人にとっての恩寵(おんちょう)にちがいない。この不幸な帝王は、あるいは神に愛された人であったかも知れないのだ」―

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