「国会議員アンケート結果」の不思議な紹介
10月22日のBS日テレ「深層NEWS」でのやり取りから。
但し、わが家にはテレビが無い。なので録画を確認したのではなく、専ら私のおぼつかない記憶による。その事を予めお断りしておく。
司会の辛抱次郎氏が、各種の世論調査では「女性天皇」「女系天皇」容認論が圧倒的に多い事実に、触れられた。これに対し、憲法学者の百地章氏が反論された。
一般国民は「女系」の意味すら分かっていない。だから、むしろ、皇室典範の改正なり特例法なりを直接、審議する立場にある国会議員の考え方こそ、国民の代表という立場からしても、より注目すべきだと。その上で、具体的なデータとして「週刊朝日」を掲げながら、同誌が実施した「全国会議員アンケート」の調査結果を紹介された(11月1日号)。
「『愛子さまが天皇に即位できるように皇室典範を改正するべき』と回答した国会議員は僅か28%しかいなかった」などと。
私は、たまたま同じデータを事前に分析していたので、同氏の“紹介の仕方”に驚いた。そこで早速、発言を求めて、視聴者に誤解を招かないように、“補足”した。
「このアンケートは、実は各設問に対し、6割前後の『無回答・回答拒否』があります。最初にその事実を示して置かないと、数字の解釈が正反対になってしまう。具体的に全て紹介しましょう。
『愛子さまが天皇に即位できるように皇室典範を改正するべきか』という設問に対し、無回答・回答拒否が65%(!)。『するべき』が28%だったのに対し、『するべきではない』は僅かに8%(!)。3分の1以下です。
『女系天皇を認めることに賛成ですか、反対ですか』については、やはり無回答・回答拒否が58%。賛成が29%。反対が13%。これも半分以下。
『旧皇族の復帰、女性宮家の創設についてどういう意見ですか』については、無回答・回答拒否が62%。『女性宮家の創設には賛成』が26%。『旧皇族の復帰には賛成』が6%。4分の1以下。となっています」と。
これだけ紹介すれば、百地氏の主張にとって、むしろマイナスの調査結果であった事実が、多くの視聴者には理解できたはずだ。同時に、百地氏が自己の主張に有利な印象を与える為には、嘘は吐(つ)いていないものの、殆ど「トリック」のようなやり方も、敢えて辞さない人物と受け止められたのではないか。
私自身、皇位の安定的な継承を巡る考え方こそ異なっても、お人柄についてはずっと前から信頼もし、尊敬もして来ているだけに、意外だった。しかも、(番組では触れなかったが)この調査は単に「無回答・回答拒否」(という回答)が飛び抜けて多かっただけでなく、実は全議員708人中、無回答・回答拒否も含めて、とにかく何らかの返事をしたのは、たったの170人(全体の2割強!)しかいなかった。他は全てナシのつぶて。
従って上記の数字も、その僅か2割強を100%とした上での数字に過ぎない。だから、私自身は元々、このアンケート結果を積極的に紹介する気は全く無かった。その意味でも、百地氏がこれをあたかも有力な反論材料であるかのように紹介されたのは、不思議だ(それだけ反論の材料が無いという事か)。
私なぞは逆に、国会議員達の国家の最重要・最優先課題に対する徹底した無関心ぶりに、愕然としたのが正直な感想だ。そこにこそ、この問題の深刻さがあると言っても、決して言い過ぎではないだろう。この関心の異常な低さは、私の肌感覚で敢えて言わせて戴けば、心ある国民の関心の高さを遥かに“下回って”いるのではないか。
その点で、百地氏が国民一般を「下」に見て、国会議員を一律に「上」に位置付けるかのような言い方をされたも、違和感があった。私は、少なくとも皇室というテーマについては、庶民の健全さにこそ信頼を寄せている。