昭和から平成への御代替わりの際に、上皇陛下はご自身の大嘗祭(和訓では“おおにえのまつり”とも)について、以下のようにお詠みになった。
父君の
にひなめまつり
しのびつつ
我がおほにへの
まつり行なふ
「父君」とは勿論、昭和天皇。 昭和天皇の毎年の神嘉殿(しんかでん)での新嘗祭に当たり、上皇陛下は「皇太子」として同じ殿内の西隔殿の座において(昭和天皇の実際のご所作を直接にはご覧になってはいないものの)、厳粛な祭祀の時間を共有しておられた(皇太子は天皇が御告文〔おつげぶみ〕を読み上げられる迄はご端座のままで、それが読み終えられた後、南庇〔みなみびさし〕に進まれてご拝礼をなさる)。 その大切なご体験を振り返りつつ、ご自身の大嘗祭に臨まれた時のお気持ちを、一首の和歌に託された(平成2年の御作)。 新嘗祭だけにとどまらず、皇太子として昭和天皇とご一緒に皇室の祭祀に携わって来られた歳月を背負って、大嘗祭に向かわれたに違いあるまい(宮中祭祀の小祭では殿内にお入りになるのは天皇と皇太子だけ。大祭でも天皇・皇后、皇太子・同妃のみが殿内に入られる)。 天皇陛下も長年、上皇陛下とご一緒に新嘗祭をはじめとする皇室の祭祀に、ご熱心に携わって来られた。畏れ多いが、恐らく同じようなお気持ちで大嘗祭に臨まれたことであろうと拝察申し上げる。