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執筆者の写真高森明勅

天皇・皇后両陛下からビデオメッセージ

更新日:2021年1月24日


天皇・皇后両陛下からビデオメッセージ

新年に当たり、宮内庁は、天皇・皇后両陛下から国民への“おことば”を、ビデオメッセージとして公表した。両陛下の国民への濃(こま)やかなお心配りが拝され、有難い。


先ず、天皇陛下のおことばから。


「この(新型コロナウイルス)感染症により、私たちの日常は大きく変わりました。特に、感染拡大の影響を受けて、仕事や住まいを失うなど困窮し、あるいは、孤独に陥るなど、様々な理由により困難な状況に置かれている人々の身の上を案じています。感染症の感染拡大防止と社会経済活動の両立の難しさを感じます。また、感染された方や医療に従事される方、更にはその御家族に対する差別や偏見といった問題などが起きていることも案じられます。その一方で、困難に直面している人々に寄り添い、支えようと活動されている方々の御努力、献身に勇気付けられる思いがいたします」


「私たち人類は、これまで幾度(いくど)も恐ろしい疫病や大きな自然災害に見舞われてきました。しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えてきたものと思います。今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを願っています」


「即位以来、私たちは、皆さんと広く接することを願ってきました。新型コロナウイルス感染症が収まり、再び皆さんと直接お会いできる日を心待ちにしています」


次に、皇后陛下のおことばから。


「この1年、多くの方が本当に大変な思いをされてきたことと思います。今年が、皆様にとって少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします」


憲法に定められた天皇の国事行為の多くは、天皇陛下お一人だけでなさる。しかし、公的行為については、皇后陛下とご一緒だったり、他の皇族が加わられる場合も、しばしばある。


この度のビデオメッセージは、新年一般参賀でのご挨拶に代わる性格を持ち、陛下からの懇篤なおことばと共に、皇后陛下からもおことばを戴いたことは、国民が直面している困難に対する、両陛下のご憂念の深さによるものに他ならないだろう。


忝(かたじけ)ない。


改めて言う迄もなく、今回のことは、上皇陛下の2回にわたるお心のこもったビデオメッセージの前例があってこそ。そのことも銘記したい。


ちなみに、一般参賀の際に、天皇陛下がマイクを通して、直接、国民におことばを賜るようになったのは、昭和天皇が80歳のお誕生日を迎えられた昭和56年4月29日から。これは、昭和天皇ご自身の強いご希望による。


その時は、現在のような備え付けのマイクではなく、係員がわざわざスタンドマイクを運んでいた(恐らく、恒例になるとは予想していなかったのだろう)。おことばの内容は概(おおむ)ね以下の通り。


「今日は誕生日を祝ってくれてありがとう。大勢の人が来てくれてうれしく思います。これからも皆が元気であるよう希望します」と。


勿論(もちろん)、この時の国民の感激はとても大きかった。若い世代の中には、参賀の際に、陛下からおことばを戴くのが当然のように錯覚している人がいるかも知れないので、念の為に付言しておく(もとより、この度のビデオメッセージも決して当たり前ではない)。

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