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執筆者の写真高森明勅

“現状”では男系を最“優先”?

更新日:2021年1月24日


“現状”では男系を最“優先”?

共同通信が次のような記事を配信した(1月3日、12時29分配信)。


「菅義偉首相は3日放送のニッポン放送ラジオ番組で、国会が速やかな検討を求めている安定的な皇位継承策を巡り『現状においては、男系継承は最優先にすべきだ』と語った。…一方、旧宮家(旧皇族)の男系男子の皇籍復帰に関しては『私の立場で発言することを控えたい』と述べるにとどめた」と。


菅首相が、わざわざ「現状においては」と断っている点に、注意する必要がある。しかも「男系“優先”」という表現には、女系を“排除しない”含意がある(あくまでも「男系“絶対”」ではない)。なかなか巧妙な言い方だ。


旧宮家案について、決して言質(げんち)を与えないのも、従来と変わらない。菅首相はこの番組で、これまで通り、当たり障りの無い発言をしたに過ぎない。だから、取り立てて報道する価値があったか、どうか。このテーマへの、一般の関心を改めて喚起した、という点では無意味とも言えないが。


なお、旧宮家案で対象になるのは、かつて皇族だった方々(旧皇族)の子供や孫などの世代(つまり1分も1秒も皇族だったことがない)。だから、同記事中に「旧皇族」とか、「復帰」とあるのは、正しくない。念の為に。


国会議員も含めて、「男系維持」論者は、「男系の重み」「男系優先」などの発言が、とりもなおさず旧宮家案の採用を意味すると短絡しがちで、又、そのような連想も無理からぬものがあるのだが(むしろ、そうした短絡を“狙った”表現とも言える)、これまでの政府サイドの言い回しを少し丁寧に検証すると、前者には常に“逃げ道”が用意されていて、後者と必ずしも直結しないことが分かる。

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