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執筆者の写真高森明勅

近代思想家の差別的「女性」観


近代思想家の差別的「女性」観

イギリス名誉革命の中心的論者だったジョン・ロック。その社会契約や抵抗権についての考え方は、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言に、大きな影響を与えたとされる。しかし、その「女性」観はどうだったか。


以下のような指摘がある。


「ロックは、家族は男性と女性が結婚を契約することにより始まると論じます。しかしその関係については、女性が男性に従属するのは当たり前のことだと論じました」


「ロックは熱心なプロテスタントでしたから、女性は男性に支配されるべきだという『聖書』に書かれた神の命令は、当然受け入れるべきだったのです。つまり自由で平等な人間が社会契約によって国家を作る前の『自然状態』において、家族を作るために女性を抑圧する

結婚契約が結ばれていたというのが、ロックの描いた家族と国家の構図でした」


「ロックが『社会契約』による国家の設立を論じる時、そこには女性についての論及がありません。この時ロックが契約を結ぶ主体として考える自由で平等な『人間(Men)』とは、男性だけを意味すると考えるべきでしょう。なぜ男性に限られると理解できるかといえば、

契約を結ぶのは理性と財産を持っている『人間』だとされているからです。(ヨーロッパにおいて)理性はアリストテレスの昔から男性だけが持つ属性でした。またロックの議論において、財産は人間が労働することによって獲得するとされていましたが、神から労働を命じられたのは男性でした。ですから財産を獲得できるのは男性だけだということになります」


「ロックによって、ペイトマンの分類における『近代的家父長制』の考え方が提示されたのです。こうして女性は家族に閉じ込められ、公的領域から締め出される状況が作られていくことになりました。これが近代社会における男女関係の構造を形作っていきます」


「近代社会における家族と国家の分離と、家族における女性差別の構造が…現実化するのは…18世紀の産業革命を経た後ですが、現在の社会を見ると、ロックの主張した構造があまりにも忠実に実現されているのに驚くばかりです」(中村敏子氏)


近代社会は、それまでの抑圧的な旧秩序を打破して、「人間」に自由と平等をもたらした―と語られてきた。しかし、その「人間」とは(“欧米圏の人々”に限定されていただけでなく)、もっぱら「男性」を意味していたようだ。

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