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執筆者の写真高森明勅

たった2年間だけの自由


 たった2年間だけの自由

昭和60年、天皇陛下が2年間のイギリス・オックスフォード大学での留学を終えられてご帰国の途中、ニューヨークで取材した産経新聞の記者が後に、以下のような記事を書いていた

(当時、マスコミは陛下がアメリカのどこかでお見合いをされるかも知れないとして、執拗に追い回していた)。


「そんなある時、わたしはいたたまれなくなって『直接話しかけてはいけない』という協定を破り、殿下(天皇陛下。当然ながら、昭和時代にはまだ「皇太子」にもなっておられず、浩宮〔ひろのみや〕殿下とお呼びしていた)にこう申し上げた。


『殿下、申し訳ありません。かけがえのない自由を楽しまれておられる時間にお邪魔ばかりしておりまして』すると、殿下は、微笑を浮かべられて、きっぱりとおっしゃられた。『いいえ、自由は2年間オックスフォードでじゅうぶんに堪能しましたから』たった2年間の自由。それだけでじゅうぶんに堪能したといわれる殿下。この返答には今後は天皇家のご長男としてひたすら国民のことだけを考えて『天皇の道』を歩まれる『覚悟』が示されている。

もう自分の人生には自由はない。25歳の青年が示したなんと壮絶な『覚悟』ではないか」

(産経新聞、平成5年1月31日付)


普通、我々が自らの「自由」について、“堪能する(心ゆくまで満足すること)”という表現を使うだろうか?それが与えられて当たり前と思い込んでいる限り、このような言い方は出てこないだろう。何か特殊な状況でもなければ、「空気を堪能する」とは言わないように。

こうした言葉遣い一つだけからでも、陛下の若い頃からのご自覚、ご覚悟が伝わる。


追記。

先日のブログで天皇陛下の記者会見でのご発言を紹介させて戴いた中で、振り仮名に(みや)とあるべき箇所を(まや)と誤っていたのを、Facebookをご覧下さった方から教えて戴いた。親切なご指摘に感謝。又、「多くの」とあるべき箇所も「多くある」と間違っていた。ここに謹んで訂正する。


手書きでは起こり得ないミスが生じてしまった。天皇陛下のご発言について誤りがあったことを深くお詫びする。

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