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執筆者の写真高森明勅

皇位の安定継承、政府のロジック

更新日:2021年5月27日


皇位の安定継承策を議論する有識者会議がいよいよスタートする。政府のロジックは、“本音”としてはおよそ以下の通りだろう。


①皇位はこれまで例外なく男系によって継承されて来た。

②しかし、旧宮家案は無理だし(②‐1)、男系維持に決定的な貢献をして来た非嫡出による継承可能性も排除されている(②‐2)。

③よって、皇位継承資格を女性・女系の皇族に拡大する以外に方法は無い。


普通に考えると、大体このような結論になる(①について私は異なる考え方をしているが)。小泉純一郎内閣当時の有識者会議報告書が、まさにこのロジックを表明していた。 その後、国会での政府答弁を見ても、このロジックと決定的に抵触する発言は無いはずだ。


①は耳にタコが出来る位、繰り返し聞かされて来た。②の前段(②‐1)も、事実上、繰り返し表明されている(平成31年3月20日、参院財政金融委員会での安倍晋三首相〔当時〕の答弁、令和2年2月10日、衆院予算委員会での菅義偉内閣官房長官〔当時〕の答弁、同3年2月26日、衆院予算委員会第1分科会での加藤勝信官房長官の答弁など)。


②の後段(②‐2)と③は、一部の強硬な男系維持派の反発に配慮して、暫(しばら)く伏せられている。しかし、ロジックそれ自体を変更した気配は無い。国民の圧倒的多数も、上記ロジックに大きな違和感はなく、ごく当然のこととして支持するだろう。ならば、皇位の安定継承を目指す皇室典範の改正に、何の障害も無さそうに見える。だが、残念ながらそうではない。政府の本音と国民多数の願いは一致している。にも拘(かかわ)らず、政府はこれまで、最優先すべきこの重要課題について、ズルズルと先延ばしを続けて来た。

それは何故か。

男系維持派が、国民全体の中で数は少なくても、“確固たる”信念と強大な組織を持ち、結果として侮れない政治力を発揮できるからだ。だから、政府はその反発を恐れて、とっくに“正解”が分かっていて、その上、「皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題」(退位特例法の附帯決議)なのに、解決に手を着けないまま現在に至ってしまった。しかし政府は遂に、「皇位の安定継承」を正面に掲げた有識者会議の設置を決断した。もう後戻りは出来ない。

皇統問題は、いよいよ最終決着を迎えようとしている。男系維持派は政府に対して、上記ロジックを貫徹させない為に、総力を傾けるだろう。この期(ご)に及んで、又ぞろ「先送り」を図ろうとする動きも、既に見える。

心ある国民は、政府と国会の正しい判断を後押しすべく、今こそ、サイレント・マジョリティーからボーカル・マジョリティーに脱皮すべきだ。

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