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執筆者の写真高森明勅

皇位継承、2つのシナリオ

更新日:2021年5月25日


以前、「皇位の安定継承、4つのシナリオ」というブログを書いた(1月16日)。その時に皇位の安定継承への取り組みを巡って想定したシナリオは以下の通り。


① 皇位の安定継承に向けて、女性・女系皇族の即位を可能にし、それが実際に機能できるようにする為に、女性宮家を創設する。


② 皇位の安定継承への取り組みを先延ばしして、皇族数を目先だけ確保する為に

“一代限り”の女性宮家を認める。万一のケースに備えて、男系女性皇族の即位も可能にする。


③ 皇族数の確保も諦(あきら)めて、ただご公務を分担する特別職の国家公務員(批判された「皇女」の看板だけは取り換える)を設けて、未婚の女性皇族がご結婚の後、国民の仲間入りをされた時点で就いて戴く。


④ 「まだ40年ある」(安倍晋三前首相)ので、いずれ「神風が吹く」(同)のを信じて(?)、ひたすら先延ばしを続ける。


しかし、わざわざ有識者会議を設置するのであれば、④は無くなる(はず!)。③も、(同じ看板の“皇女プラン”のまま)「議題となる見通し」との報道があるものの、昨年の経緯を振り返ると、現実的な選択肢としては除外されると考えるのが自然だろう。


となると、残る選択肢は①と②だけ。


普通に考えると①が正解で、政府もそのことはとっくに分かっているだろう。


だが、一部の男系維持派が無理な旧宮家案を強硬に求めて来ることが、当然、予想できる。その時に、政府・国会がきちんと筋を通せなくなった場合、唯一の解決策の①と元々無理筋の旧宮家案を“足して二で割る”式に、②のシナリオに逃げ込む恐れがある(②でも“一代限り”の女性宮家だけ、という場合も)。


皇統問題の決着は、詰まるところ①と②のどちらを選ぶか、が問われるのではあるまいか。

しかし、②は決着ではなく、実態は“先延ばし”でしかない。しかも、内親王方がめでたくご結婚をされ、宮家を立ててお子様に恵まれられても、そのお子様は男女の性別に関わりなく、宮家のご当主が「女性だから」という“だけ”の理由で、はじめから皇位継承資格を持ち得ないというルールは、極めて屈辱的であり、人格の尊厳を損なう制度と言わざるを得ないだろう。

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