世界でも類いまれな「戦力」不保持を自国に強制する憲法
わが国は、自国が「戦力」を保持することを禁止した、世界でも類い稀(まれ)な憲法を持っている。従来、コスタリカ共和国(人口=499万人)の憲法が軍隊を否定していると喧伝されて来た。だが、その実態は井上達夫氏の報告に詳しい。
同憲法には「米州(アメリカ州、南北アメリカ)の協定により又は国防のためにのみ、軍事力を組織することができる」(12条)「コスタリカ人は…祖国に奉仕し祖国を防衛し…なければならない」(18条)などの規定があった(『属国の9条 ゴー宣憲法道場Ⅱ』毎日新聞出版)。
又、軍隊を廃止した(アメリカによって解体された)パナマ共和国(人口=422万人)の憲法にも「すべてのパナマ人は、国家の独立と領土の防衛のために武器を持つ義務がある。…外部からの侵略の脅威のある場合、一時的に法律によって、共和国の国境と管轄を保護するために、特別警察組織を設置する」(310条)などの規定がある(前田朗氏『軍隊のない国家』日本評論社)。
一方、わが国の憲法の場合、祖国防衛の義務を定めた条文が無いのはもとより、9条2項の規定により、「戦力」の不保持が“強制”されている。その為、自衛隊が憲法違反を免れるには、いつまでも「戦力」未満の“非”軍隊でなければならない。
そのことは、(安倍晋三氏が提案していた)9条2項を維持したまま、ただ「自衛隊」を書き加えるだけの改正では、何も変わらない。
むしろ、憲法改正のモメントを失わせ、自衛隊の現状を固定化してしまう結果を招く恐れが強い。