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執筆者の写真高森明勅

政府答弁書、有識者会議は現在の皇位継承順位を前提にせず!

更新日:2021年5月25日


去る4月8日に、国民民主党の山尾志桜里衆院議員が退位特例法の附帯決議に応える為の有識者会議に関し、以下の3点について質問主意書を政府に提出された。


およそ次のような趣旨の質問だった。


①皇位継承の順位について、「現在の順位を変えない」ことが前提になっているのか?

②ヒアリングの聴取項目に「(現在、皇族でない)皇統に属する男系の男子」とある(項目9)のは、いわゆる旧宮家に限定されないように読み取れるが、どのような対象を想定しているのか?

③今後のスケジュールについて。


これに対し、政府から4月20日に答弁書が示された。回答はおよそ以下の通り。


①「(附帯決議に示された課題について)予断を持つことなく議論していただきたいと考えている」。


②「具体的なものが念頭に置かれているものではない」


③「落ち着いた議論をしっかり行っていただきたいということで、スケジュールというものを具体的にお示しをしているわけではございません。そうした進め方を含めて、会議のメンバーの皆さんに、附帯決議も前提によくお考えいただきたい」(加藤勝信内閣官房長官、令和3年3月26日、参院予算委員会)との答弁の通り。


この度の山尾議員の質問主意書の提出による最大の成果は、①において「現在の継承順位を変えない」ことを「前提」として“いない”旨の明確な回答を得たこと。この言質が取れたことの意味は大きい。


そうした「前提」が無いのであれば、私がこれまで主張して来た「ゼロベース」での検討が可能になるはずだ。


②は、ほとんど見逃されているようだが、有識者会議の聴取項目に取り上げられているのは、従来唱えられて来たいわゆる「旧宮家案」ではない。旧宮家系男性に限定せずに、皇統に属する男系の国民男性を広く皇籍取得の対象とし得るプランだ(この点、ヒアリング対象者自身が余り気付いていないように見えるのは、いささか奇妙)。


今回の答弁で、旧宮家に限定して“いない”ことが確認できた。これは、皇室と国民の区別を曖昧にする同プランの「問題性」を、より浮き彫りにするものと言える。


③への回答で附帯決議に言及しているのは、同決議に「先延ばしすることはできない重要な課題」「速やかに国会に報告する」などとあるのに配慮する姿勢を示したものだろう。


少なくとも皇位継承の行方を巡り、このタイミングで、かくも見事にポイントを衝いた質問を、スピード感を持って政府に突き付けられる政治家は、今の国会では山尾議員以外に余りいないのではないか。とても残念なことだが。

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