加藤官房長官が改めて憲法上「女系天皇」容認との見解を示す
共同通信が以下のような記事を配信(6月2日、17時11分)。
「加藤勝信官房長官は2日の衆院内閣委員会で、安定的な皇位継承策を巡り、母方が天皇の血筋を引く女系天皇も憲法上は認められるとの見解を示した。
同時に、皇室典範は皇位継承者を男系男子に限定していると説明。父方が血筋を引く男系継承が『古来例外なく維持されてきた重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある』と重ねて強調した。
政府の有識者会議は4月上旬から憲法や歴史の専門家からヒアリングを実施しており、女系の是非が大きな焦点となっている。
旧宮家(旧皇族)の皇籍復帰については、男系男子子孫への意思確認は考えていないとの意向を改めて表明した」
この報道に対し、憲法学者の南野森氏(九州大学法学部教授)と近現代史上の皇室を研究して来られた歴史学者の河西秀哉氏(名古屋大学大学院准教授)が、興味深いコメントをしておられる。
南野森氏・河西秀哉氏のコメント
南野氏 「憲法第2条には、『皇位は世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する』とあり、男性でなければならないとは書かれていません。
その意味は、旧憲法の第2条が『皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニヨリ皇男子孫之ヲ継承ス』として 明確に男子のみが継承できるとしていたことと比べれば、より一層明らかになるでしょう。…皇室典範を改正しさえすれば、『男系男子』でない者(勿論、皇族ー引用者)が皇位を継承することも可能となります。憲法を改正する必要はありません」
河西氏 「…現在、有識者ヒアリングが実施されていますが、『憲法学者』と呼ばれる有識者の1人(百地章氏ー引用者)が、『女系は違憲』という旨の発言をしたことを受けてのやりとりかと思います。政府としては、その見解は採らないとしたわけです」
政府は旧宮家案を捨て女系も視野
先日のブログ(5月30日)で、女性・女系天皇について次のように書いた。
「憲法上、何ら問題を含まない(百地章氏だけ異論を唱えておられるが、無理な解釈で政府見解とも対立し、取り上げるに及ばない)」と。
今回の加藤長官の発言は、私の指摘を改めて裏付けてくれた格好だ。
旧宮家系子孫の意思確認を重ねて否定したのは、憲法違反の疑いがある選択肢は採用しないという政府の態度を、改めて表明したことになる。
「男系継承が古来例外なく維持されてきた重み“など”を踏まえ“ながら”、“慎重かつ丁寧に”検討」という目眩ましの常套句は、以前に分析したように、ほとんど意味が無い。
むしろ、これまでの男系限定を無条件にそのまま維持するようなことはしないで、しっかりと「検討を行う」という本音を、柔らかくオブラートに包んだ言い方だ。
霞ヶ関文学(官僚作文術)の最高傑作か。