いわゆる旧宮家系国民男性が、内親王・女王とのご婚姻を介さないで皇籍取得を可能にする案が、憲法の“国民平等の原則”に違反し、憲法が禁じた「門地(家柄)による差別」に当たる事実は、男系限定維持を目指す人々にとって、かなりショックらしい。
一発アウトの宣告に等しいからだ。
しかし、男系派の代表的な論者で憲法学者の百地章氏でさえ、十分な反論ができなかった。
中には、わざとスリカエているのか、単なる無知なのか、それとも論理的思考力が欠けているのか、いささか判断に苦しむような言い訳も見掛ける。
《皇室だけが平等原則の枠外》
その1は、皇位の「世襲」継承(第1章)は、元々“国民平等の原則”(第3章)の枠外だから、
それに「門地による差別」を持ち出すのは筋違い、という論法だ。
勿論、皇位の世襲継承は国民平等の原則の枠外だ。
その点は間違いない。
しかし、それは第1章の適用対象者である皇室の方々(天皇・上皇・皇族=皇統譜に登録)に関わるロジックであって、第3章の適用対象者である国民(戸籍に登録)には通用しない。
旧宮家系を含む皇族ではない皇統に属する男系子孫は皆さん、当たり前ながら国民だ(戸籍に登録)。
その人々が、国民平等の原則から“例外扱い”を許される余地は、ない。
そのような例外扱いこそ、まさに憲法が禁じる「門地による差別」にドンピシャリ該当する。
《特定の家柄が前提か否か》
その2は、国民女性が男性皇族とのご婚姻を介して皇籍を取得される(皇室典範第15条)のが憲法違反でないなら、旧宮家案も大丈夫ではないか、という意見だ。
これは本気で言っているのか。
それとも、国民平等の原則が理解できないで、言っているのか。
改めて言うまでもなく、ご婚姻の場合、お相手について、血筋や家柄などの制限は一切、ない(旧皇室典範では、皇族又は特に認められた華族という制限があった)。
だからこそ「門地による差別」はないのだ。
現に、皇后陛下、上皇后陛下、秋篠宮妃殿下など、どなたもそうした制限とは全く関係無く、ご婚姻に至っておられる。
ところが、旧宮家案の場合はどうか。
養子縁組にせよ、別の方法にせよ、対象となるのは、それこそ「旧宮家」という“特定の家柄”(!)に限られる。
そのような家柄による制限が設けられる以上、紛れもなく、「門地による差別」そのもの。
これが憲法違反なのは余りにも自明ではないか。