内閣に設けられた長い名前の有識者会議。
「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法に対する附帯決議』に関する有識者会議」。
先頃の、上皇陛下のご譲位を可能にした特例法の附帯決議が、政府に求めた課題に応える為に設けられたはずだ。
同附帯決議では、政府に対して「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」についての検討を求めていた。
よって、同有識者会議は“皇位の安定継承”への道筋を探るのが役目。
ところが、それには全く手を着けず、附帯決議それ自体とは何の関係もない、目先だけ(!)の「皇族数の確保」の為の方策を検討すると言う。
公然たる“任務放棄”以外の何物でもない。
何故、このような体たらくになってしまったか。
現在の皇位継承順位を変更しない、という議論の枠組みを自ら設けたからだ。
皇位の安定継承を本気で追求しようとすれば、女性・女系天皇への道を切り開くしか方法はない。
女性・女系天皇への道を切り開けば、当然、現在の皇位継承順位を変更せざるを得ない。
女性で直系の皇嗣つまり皇太子たるべき方が、現におられるからだ。
有識者会議はその事実に直面し、全面撤退を決めてしまった。
これは逆に言えば、少なくとも、皇位の安定継承と現在の皇位継承順位の維持が、両立し得ない点は、ちゃんと理解していることを意味する。
しかし、現在の皇位継承順位には、元々無理がある。
傍系の皇嗣であられる秋篠宮殿下が、天皇陛下より僅か5歳お若いだけなので、畏れ多いが、実際には即位されない可能性が高いからだ。
ご自身も既にそのことを示唆しておられた。
普通に考えると、現在の継承順位はそのまま行われないだろう。
そうすると、悠仁親王殿下は天皇のお子様ではないお立場のまま、つまり先代の天皇が、その“お務め”に全身全霊で尽くされるお姿を、皇嗣として間近に拝する機会を得ないまま、即位するという順序になりかねない。
端から無理がある継承順位を守る為に、最も肝心な皇位の安定継承を断念するのは、本末転倒も甚だしい。