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執筆者の写真高森明勅

政府は敬宮殿下20歳のお誕生日前の決着を目指しているのか?


政府は敬宮殿下20歳のお誕生日前の決着を目指しているのか?

皇位の安定継承を目指す取り組みは断念し、目先だけの皇族数の確保へと路線変更した有識者会議。

結局、同会議で検討対象にするのは次の2案。


①一代限りの女性宮家。 ②国民の中の皇統に属する男系男子の皇族との養子縁組を可能にする。


産経新聞(7月28日付)の「主張」に、こんなことを書いていた。

「(有識者会議が26日に公表した)中間整理が、旧宮家の男系男子を『皇統に属する』と位置付けた意味合いは重い」と。これは不思議な文章だ。

有識者会議が公表した「今後の整理の方向性」には、旧宮家系国民男性への具体的な言及は一切無い。むしろ、旧宮家系だけに限定しない「(皇族でない)皇統に属する男系の男子」というより広い概念を、採用している。

そのことの「意味合い」がよく理解できていないのだろうか。


《皇統に属する国民は多い》


「皇統に属する」国民は、旧宮家系だけでなく、数多く存在する。なので、里見岸雄博士は「皇胤(こういん=天皇の血筋、その子孫)国家」という表現をされている。


「(帝国憲法第1条に言う)『万世一系』は…一定の名分(めいぶん=道徳上、身分・立場などに応じて守るべき責務)によつて限界づけられていなければならぬ。単に、生物学的事実による万世一系をいふならば、皇胤国家たる日本の如きは、万世一系の出自たる者は殆ど無数である。

『万世一系』の万世一系たる所以は、故にこの単なる生物学的事実の一般概念に存せず、特に皇族たる身分範囲内において体承せられある『万世一系』の意味である事は云ふ迄もない。茲(ここ)に、日本民族の、血統上の大義名分が確立する」(『天皇法の研究』)と。


生物学的事実の一般概念としては、「皇統に属する」国民はあまた存在する。 源氏・平家の子孫なども皆、該当する事実から想像して貰うと、分かりやすいだろう。

「男系」の血筋の濃さで言えば、旧宮家系より遥かに濃い系統も存在する(いわゆる皇別摂家など)。

そうであれば、現に「皇族」という身分にあられるかどうか、皇室と国民との厳格な区別こそが、最も重要になる。にも拘らず、皇室と国民の区別より男女の性別を優先しようとする人々が、一部に存在するのは残念だ。


《10月中旬~11月末迄が山場か?》


有識者会議での検討作業は、今後しばらく事務方に委ねられる。 しかし、①②共に無理が多く、首をかしげる。果たして有識者会議はどのような答申をまとめるのか。政府は有識者会議の答申内容をそのまま国会に報告するのかどうか。普通に考えて、事務方の検討か、政府のチェックか、国会の総意取りまとめに向けた審議か、いずれの段階かで、②が除外されるのは当たり前だろう。


恐らく、①を“一代限り”の制限付きのままとするかどうかこそ、最も大きな対立点になるのではあるまいか。

国民の代表機関である国会の機能がもし健全に発揮されるなら、更に、附帯決議が求めた「皇位の安定継承」という本来の課題に沿った検討へと、路線の“再”変更も望み得るかも知れない。


衆院選(今のところ投票日は10月10日か17日頃と見られている)後、最終決着のステージに移り、政府の思惑としては、恐らく敬宮殿下が20歳のお誕生日を迎えられる12月1日より前には、 はっきり結論を出したいのではあるまいか。


まだ結論が出ないままその日を迎えれば、「女性天皇」を求める声が一層、高まることが予想されるからだ。

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