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執筆者の写真高森明勅

皇位の安定継承の行く手に暗雲、急に新著を執筆することに


皇位の安定継承の行く手に暗雲、急に新著を執筆することに

現代日本が直面している最優先の政治課題とは何か。

皇位の安定継承を目指す皇室典範の改正に他ならないだろう。昨年、政府は「皇女」プランなる姑息な方策で誤魔化そうとした。しかし、これを押し戻して、有識者会議を設置する線まで、何とか事態を動かすことが出来た。


しかし、皇室典範特例法の附帯決議で求められた「皇位の安定継承」への課題を検討するはずの有識者会議が、自らに与えられた「宿題」を投げ出して、附帯決議とは無関係の“目先だけ”の「皇族数の確保」へと、大幅に後退してしまった。その様子を見ていて、改めてこの問題の基本を再確認し、再整理する本を出す必要があるかも知れない、と考えるようになった。


広く世論に訴えると共に、最終決着を委ねられる国会議員や、国会議員の認識にも影響を与えるメディア関係者にも、しっかりメッセージを伝えたいと考えたからだ。


《原稿の締め切りまで2週間余り》


そこで、去る6月29日に旧知の編集者と会って話をした。コンパクトでそれなりに訴求力を持つ新書で出すなら、9月末頃か11月末頃に出すタイミングになるという。


「11月末では、もはや戦い済んで日が暮れて…になりかねない。もし出すなら9月末しかない。

しかしその場合、原稿の締め切りがいつ頃になりますか?」


編集者

「8月は印刷会社の長い休みが入るので、締め切りは繰り上げって…7月の頭(初旬)ですね。

原稿の分量は、コンパクトにまとめて貰って、四百字詰め原稿用紙で大体250枚から300枚までの間」


「7月の頭? 今日は6月29日ですよね。いくらコンパクトと言ってもしかるべき熟慮が必要なテーマなので、1週間や10日くらいでその分量を仕上げるのは、さすがに無理でしょう」


こうして、締め切りはギリギリ遅く設定して貰って、7月16日ということに決まった。それでも執筆期間は2週間余りしかない。


《大学の前期試験と重なる》


しかもこの時期は、ちょうど大学での前期試験のタイミングに重なる。私は例年、前期・後期共に試験はいわゆる試験期間中にはやらないで、必ず最終授業日の1週間前に行っている。何故なら、最終授業で学生達に試験問題の模範解答を詳しく示し、採点結果を伝える必要があるからだ。


それをやらないと、せっかく試験を行った教育効果が、大きく削がれてしまう。試験を行う最大の目的は、それまでに学んだ内容の中で取り分け重要なポイントについて、正しく理解できているかどうかを、学生が各自“自己チェック”することにあると考えている。その為には、当然の前提として、試験問題は枝葉末節を問うのではなく、重要なポイントをきちんと網羅した、直球勝負の内容にしなければならない。


その上で、「鉄は熱いうちに打て!」なので、学生が試験問題に取り組んで悪戦苦闘した記憶が薄れない時点で、模範解答を丁寧に説明する。採点結果も伝える。そのことで、私が何を教えようとしていたか、各自どこが理解できていなかったかを、切実に分からせることができる。その為には、間に長い夏休みを挟んではいけない。


私は試験翌週の最終授業こそ、それまでの授業の文字通り集大成であり、最も効果的な教育のチャンスだと考えている。だから、最終授業日とか、全ての授業が終わった後の試験期間中に試験をすることは、少なくとも私にとっては、貴重な教育機会をみすみす手放す、余りにももったいないやり方のように思える。執筆期間はもろにそれに重なる。


《手書き原稿は嫌われる》


その他、調整可能な日程は延期するするなり、再設定するなりするしかないが、勿論どうしても動かせないものもある。かなり窮屈な条件だ。私は今も手書きなので(編集者からは“絶滅危惧種”と悪口を言われている)、余計に時間がかかる。

しかし、やるしかない。そう肚を決めて執筆に取り掛かった。


取り掛かってみると、思いの外、順調に進んで締め切り前日の15日には270枚の原稿を書き上げた。しかし手書きなので、キーパンチャーが打ち直す必要があり、書き進めながら2章分ずつ3回に分けて編集者に渡す。編集者からはボロクソに言われる。


「今やキーパンチャーという職業自体が絶滅危惧種です。だから、その手配が大変なんです」と。

肩身が狭い。


それでも中身は「盛りだくさんで本格的な内容なのに読みやすく面白い(これまでの本と違って!?)」と言ってくれた。今はその校正作業中だ。

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