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執筆者の写真高森明勅

大島衆院議長が引退されることは皇位の安定継承への不安材料


大島衆院議長が引退されることは皇位の安定継承への不安材料

8月12日、大島理森衆院議長が今期限りで議員を引退されるとの報道があった。

早速、私の周囲でこれに不安を抱いたことを伝えてくれた人が、3人いた。

皇位の安定継承に関心を持ち、この問題を取り巻くの構図を、きちんと理解している証拠だ。

私自身、上皇陛下のご譲位を可能にした特例法の附帯決議で「皇位の安定継承」を求めていたことへの政府・国会の取り組みが、衆院選後にいよいよ正念場を迎える局面で、間違いなくキーパーソンの1人になるのは大島議長だと考えていた(現に、そのように公言もして来た)。


そもそも、あの特例法の取り纏めに当たって、政府の独走を許さず、国会が本来の責務を果たす上で絶大な貢献をされたのは、大島氏に他ならなかった。

勿論、特例法という立法形式を含め、内容的にも決して百点満点ではなかったにせよ、当時の有識者会議の動きを一旦止めて、法律の骨格について与野党の対立を仲介し、その総意に基づくという原則を貫き、皇室制度の改正について、良い前例を残すことが出来たのは、同氏の大きな功績だ。


野党の言い分を丸呑みしない一方、政府・与党の譲歩も引き出して、見事に合意を成立させた。 その手腕、経験、与野党との信頼関係において、今の政界で余人に代え難いものを持っておられる。


特に、附帯決議の文言の調整過程で明らかになった、皇位継承問題を巡る主な対立点などについても、熟知しておられるはずだ。昨年、政府が附帯決議への裏切りに等しい「皇女」プランを持ち出そうとした時に、野党が反対姿勢を明らかにするのを見て、間髪を入れずに断念を迫ったのも、大島氏だった。


その結果、政府は元々嫌がっていた有識者会議の設置に舵を切らざるを得なくなった。 しかし、その有識者会議も、附帯決議にまともに応える気は更々ない。ご譲位の時よりも一層、危うげに見える。やはり、国会がしっかりと筋を通すしかないはずだ。その際に、大島氏の役割は決して小さくないと見込んでいた。

この大切なタイミングでの引退は残念だ。

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