大島衆院議長が引退の意向であることが明らかになる前から、気になっていた人事情報があった。事務担当の内閣官房副長官、杉田和博氏が引退するとの情報だ。
同じ官房副長官でも、政務担当と事務担当では、その権力には天地雲泥の差がある。
政務の副長官が概ね将来を嘱望される中堅・若手政治家のポストである(従って実力はまださほど無い)のに対し、事務の副長官は全官僚機構のトップだ。
しばしば、各省の大臣よりも事務次官の方が、実務を差配する点では遥かに力を持っているように、ある意味では首相よりも実権を握っているとも言い得る。まして杉田氏の場合、これまでの副長官の中でも最も在任期間が長い。その意味では、歴代の副長官以上に最強の権力を掌握しているとも、見られる。
《旧宮家案は「グロテスク」?》
産経新聞にこんな記事が載っていた。
「男系を維持するため、戦後に皇籍を離脱した旧宮家の人々の復帰について『グロテスクだ』と露骨に嫌悪感を示す政府高官までいる」(令和2年9月24日付)。
「政府高官は『そもそも男系で継承していくことは生物学的に無理だ』と周囲に漏らし、女系にも皇位継承資格を拡大すべきだとの持論を披露する」(令和3年8月15日付)と。
新聞に「政府高官」と書かれていれば、主に官房副長官を意味する(官房長官なら「政府首脳」)。更に、重い政治課題にこれほどストレートに発言できるのは、よほど自分の権力基盤に自信を持っている証拠だ。普通に考えて、杉田氏の発言と見てよいだろう。
政府における皇位の安定継承又は皇族数の確保を巡る取り組みについて、現在の事務方の最高責任者は杉田氏(その下で直接、専門的に担当するのは、皇室典範改正準備室長の大西証史氏)。
恐らく杉田氏であれば、政治家が持ち出して来る案に対しても、本人がおかしいと思えば、それを押し返す力を持っているはずだ。
産経の記事は、その杉田氏の基本的な考え方を伝えていて、興味深い。
《杉田氏の後継者は?》
しかし、その杉田氏が引退すると、状況は変わる。この点について、以下のような情報もある。
「今秋の霞が関における最大の関心事は、杉田和博官房副長官(昭和41年、警察庁入庁)の後継問題だ。7月25日、杉田氏は副長官就任から3134日を迎え、古川貞二郎氏(昭和35年、厚生省〔入省〕)を抜き、在職日数の歴代最長記録を更新。本人は周囲に『政権の課題を処理し続けたら、ここまで来た。数字に興味はない』と素っ気なく語る。
…ここにきて霞が関で(後継者として)本命視されているのが安田充元総務次官(〔昭和〕56年、旧自治省〔入省〕)。入省以来、政治資金課長や選挙部長も歴任した、自他ともに認める『選挙のプロ』。
…『性格は温厚で敵を作るタイプではない』(総務省関係者)。杉田氏は浦和高校の先輩にあたり、総務次官時代には杉田氏のもとに足しげく通うなど覚えがめでたい。…だが、何度も『もう辞める』と口にしてきた杉田氏が、菅首相に請われる形で居座るシナリオも残されているという」(霞が関コンフィデンシャル)
果たして…。