皇位の安定継承への検討を課題とするはずだった有識者会議の報告書が、事実上の「白紙回答」に終わった。この事実について関連の資料を掲げておく。
①「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」(ビデオメッセージ、平成28年8月8日)
「これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」
②「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成29年6月1日衆院議院運営委員会・同月7日参院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会)
「一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに…整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」
③「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議の開催について」(内閣総理大臣決裁、令和3年3月16日)
「〔同会議開催の趣旨=〕『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』…の一において示された課題〔=安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等〕について、様々な専門的な知見を有する人々の意見を踏まえ議論し整理を行うため…有識者会議…を開催する」
④「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」報告書(同年12月22日)
「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承については、将来において悠仁親王殿下の御年齢や御結婚等をめぐる状況を踏まえた上で議論を深めていくべきではないかと考えます」
これらの資料を照らし合わせて読んで戴ければ、同会議の不誠実さについて、もはや改めてコメントする必要はないだろう。
国民の代表機関である国会の要請を、政府の(法令に基づかない)私的諮問機関に過ぎない同有識者会議が反故(ほご)にしたことは、ほとんどスキャンダルと言ってよいのではないか。