年末に当たり、皇位の安定継承を巡る今年1年間の動きを、ごく簡単に振り返っておこう。
〇内閣に「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」が設置された(第1回・3月23日、設置目的は、同附帯決議が政府に要請した「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」などを議論し整理すること)。
政府は元々この種の諮問機関を設けないで、「皇女」プランによる誤魔化しを狙っていた(読売新聞、令和2年11月24日付)。
しかし、それを(参院議員会館での私らのシンポジウム→国民民主党の反対表明→立憲民主党の反対表明→大島理森衆院議長の意思表明などによって)押し戻して、同会議の設置に漕ぎ着けた経緯がある。
〇同会議でのヒアリング項目には具体策として以下の諸案を列挙した。
①女性天皇
②女系天皇
③女性宮家
④皇女案と共通するプラン
⑤旧宮家案に通じる国民の中の皇統に属する男系の男子を養子縁組又は立法措置によって皇族とするプラン
〇同会議はメンバーだけでなく、ヒアリング対象者も多くが非専門家という、目立った特徴があった。
しかし、権威ある憲法学者(宍戸常寿氏・大石眞氏)が⑤を憲法が禁じる「門地による差別」に該当するとして憲法違反の疑いを指摘し、その一方で旧宮家案を唱えて来た憲法学者(百地章氏)がそれに説得力のある反論を示すことができなかった(第4回・5月10日)。
この事実が持つ意味は大きい。
〇事態の推移に危機感を抱いた私は、大急ぎ(約2週間)で拙著『「女性天皇」の成立』を書き上げた。
これは直ちに増刷になった他、読売新聞の書評欄に取り上げられ、プレジデントオンラインが抜粋を公開し、文化放送の田村淳氏の番組から出演依頼を受ける等、様々な好意的反響があった。
〇衆院選においては、(10月10日、岡山で開催されたゴー宣道場での)私の呼び掛けに応じて全国の有志が選挙事務所を訪れ、拙著を手渡すなどして、「女性天皇」の実現をアピールした。
その数は110件にも及ぶ。画期的な取り組みだった。
〇同会議が政府に提出した報告書は、予想以上に惨憺たる内容だった(第13回・12月22日)。
皇位の安定継承という附帯決議が求めた本来の課題には白紙回答で、又ぞろ先延ばし。
論点をすり替えて、自ら設定した皇族数確保への提案も、無理筋で現実味が乏しい。
私の批判的見解は共同通信から配信された(同日)。
〇立憲民主党は早速、西村智奈美幹事長が同日付の談話を発表し、同報告書が附帯決議の要請に応えず論点をすり替えており、国会での議論の土台になり得るものではないと批判。
24日に、泉健太代表も記者会見で「本質が先送りされている」と批判した。
〇同党は27日、年明け早々に党として皇位継承検討委員会を立ち上げることを発表した。
委員長は野田佳彦元首相、委員長代行が長浜博行元環境相、事務局長には馬淵澄夫国会対策委員長という陣容だ。
国会での議論において主導的な役割を果たすことを目指す。
この間、節目節目で各種メディアの依頼に応じて私の考え方を発信し、政界関係者とも接触するなど、私なりに微力を傾けて来た。
楽観を許さない情勢ながら、僅かでも希望が無い訳ではない。
報道では今のところ、来年の参院選(7月10日頃か?)の後に、国会での制度化への議論が本格化しそうだ。
いよいよ“決戦”を迎える。
それまでの取り組みが重要になる。
勿論、参院選の最中にも政治に働きかける大きなチャンスがあるはずだ。