皇位の安定継承を巡る諸課題の検討を求められていた有識者会議が、平気で白紙回答を提出した。その“理由付け”に驚く。
「次世代の皇位継承者がいらっしゃる中でその仕組みに大きな変更を加えることには十分慎重でなければなりません」と。
これは本気で言っているのか。
継承者ゼロまで放置?
「次世代の皇位継承者がいらっしゃる」と言っても、実際には秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下がお1方いらっしゃるだけ。
それでも、平気で先送りするということは、裏返して言うと、次世代の皇位継承者がいなくなるまで、皇位の安定継承の為に何もしない―という話になる。
呆れた無責任ぶりではあるまいか。
そもそも、既に「(皇位継承を巡る)仕組みに大きな変更を加え」たのは、現行の皇室典範そのものである事実に気付いていない。
これは致命的な見落としだ。
現行典範は、明治典範の皇位継承資格における「男系男子」の“縛り”をそのまま踏襲しながら、それを支える為に不可欠な側室を前提とした非嫡出・非嫡系による継承可能性を一切、排除した。
この事実が持つ深刻な意味を、果たして理解しているのだろうか。
危機の原因
早くから次のような指摘がある。
「女系継承を認めず、しかも庶子(非嫡出・非嫡系)を認めないと云ふ継承法は無理をまぬかれぬ」
「皇庶子の継承権を全的に否認することは、皇位継承法の根本的変革を意味する」(神社新報社政教研究室編『天皇・神道・憲法』昭和29年、執筆者は葦津珍彦氏)
皇位継承を巡る側室不在=非嫡出・非嫡系排除という「根本的変革」は既に後戻りできない“既定の”事実になっている(前掲書は男系維持の為に非嫡出・非嫡系継承の復活を唱えていたが)。
にも拘らず、それに対応すべき「仕組み」の「変更」がいたずらに“先延ばし”されて、現在に至った。
それこそが皇位の安定継承を困難にしている最大の原因であり、有識者会議が設置され理由でもある。
それになのに、たったお1方「次世代の皇位継承者」を理由に、又々先延ばしを図るとは。
政府は継承資格者がゼロになるのを待ってから対策を始めるつもりか。
改めて言うまでもなく、その時はもう遅い。全ては手遅れになる。