私は先日、「憲法における皇室と国民の“区別”についてシンプルに整理する」というブログを公開した(1月17日)。
「皇室の方々(天皇・上皇・皇族=皇統譜に登録)は憲法第1章が“優先的”に適用される。よって、第3章に禁止規定がある『門地による差別』や『性別による差別』(第14条第1項)などが
(第1章の象徴制・世襲制に必要とされる範囲内である限り)そのまま該当することは“ない”、というのが憲法それ自体の建て付けだ。」
「一方、旧宮家系子孫を含む国民の中の『皇統に属する男系の男子』(戸籍に登録)は皆さん当然ながら“純然たる国民”なので、憲法第3章の全面的な適用を受ける。
だから、そこで禁じられた『門地による差別』『性別による差別』などは許されない」
至ってシンプル。
しかし、この点がきちんと整理できていない人を時折、見掛けるので、“念の為に”記した。
支離滅裂な「産経抄」
ところが、それから余り日を空けないで、憲法が禁じた「門地による差別」などに該当する政府の養子縁組プランを擁護したい余り、支離滅裂になっている文章に出くわした(産経新聞1月22日付「産経抄」)。
「皇族は、日本国民であるにもかかわらずさまざまな制約を受けている」(→同じ国民〔!?〕なのに不平等)
「憲法14条の『法の下の平等』を一律に厳格適用するならば、現行憲法そのものが憲法違反にならないか」(→皇室の方々だけ特別扱いなので)
これを書いた記者は、憲法の「仕組み」自体が分からないのに、憲法論を振り回してしまったようだ。
国民への「一律」適用は当然
皇族が第3章の全面的な適用を受けないのは、国民とは“区別”された第1章の優先的適用を受ける「特別な存在」だからであり、それは憲法そのものの要請による。
だから、「皇族は日本国民であるにもかかわらず」ではないし(→皇室は憲法上、特別な存在)、「現行憲法そのものが憲法違反」なんて頓珍漢な話でも勿論ない(→憲法自体が特別扱いを求めている)。
一方、養子縁組プランの対象として想定されている人々は純然たる「国民」なので、当然、第3章を「一律に厳格適用」する必要があり、(皇族のような制約を免れ、様々な自由や権利を保障されている一方)門地・性別などによる「差別」は明確に「憲法違反」になる。
至ってシンプル。
ちなみに、これを書いた記者は立憲民主党の馬淵澄夫国会対策委員長の発言への批判として憲法論に言及しているが、その発言が憲法学の世界で評価が高い宍戸常寿東京大学大学院教授の所説に依拠していることに気付いていないようだ。
失礼ながら「…蛇におじず」という諺を思い出す。
なお、保守系の憲法学者で国士舘大学特任教授の百地章氏が養子縁組プラン違憲論に対し懸命に釈明を試みておられる(産経新聞1月21日付)。
さすがに、ここで引用した記者ほど酷くはないし、又そのご熱意には素直に敬意を表したい。
しかし残念ながら、縁組みプランの擁護に成功しているようには見えない。
これについては改めて。
追記
「『“悠仁さまがいるから”議論は先延ばし』政府が出した白紙回答に専門家が読み取る“ある疑惑”」という私の見解を載せた記事が「プレジデントオンライン」で明日(1月28日)公開予定とか。