内廷(いわゆる天皇家)にお子様、お孫様が生まれられると、直系皇族としてお名前(実名)の他に、ご称号(通称)が天皇によって定められる。
天皇陛下は「浩宮(ひろのみや)」、秋篠宮殿下は「礼宮(あやのみや)」、ご結婚によって皇室から離れられた黒田清子(さやこ)様は「紀宮(のりのみや)」というご称号を、それぞれをお持ちだった。
このご称号は、男性皇族が独立した世帯を営まれる際に授けられる、宮号(みやごう)とは区別される。
秋篠宮殿下の場合、「礼宮」がご称号だが、ご結婚されて独立の世帯を営まれるに当たり、「秋篠宮」という宮号を授けられた。
よく誤解されるが、宮号はあくまでもそれを授けられた皇族ご本人に属するもので、世帯全体の名字のような性格は持たない。
だから、秋篠宮紀子妃殿下とか秋篠宮佳子内親王殿下という呼び方は、正しくない。
秋篠宮妃紀子殿下であり、秋篠宮家の(ご次女)佳子内親王殿下という言い方が正確だ。
なお、秋篠宮家のお子様方は傍系なので、悠仁親王殿下を含めてご称号はお持ちでない。
それはともかく、天皇陛下の次の世代で上記のご称号をお持ちなのは、改めて言うまでもなく、
敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下だけ。これは、敬宮殿下こそ、今の皇室でたった“お1方”だけの直系皇族である事実を示す。
平成時代(つまり天皇陛下がまだ皇太子であられた頃)の著作だが、故・高橋紘氏の遺著『人間 昭和天皇』(上巻)にこんな記述がある。
「称号は貴人の名前を呼ぶのは恐れ多いことから付けられた。皇太子家の長女を『愛子さん』『愛子さま』と呼んでいるが、本来は『敬宮さま』と言うのがマナーである」と。
やかましく言えば、「敬宮さま」ではなく「敬宮殿下」が正しいだろう。
しかし、本来の呼び方を承知した上で、しかるべき慎みを持ちつつ、ご実名を含めてケースバイケースでよいと思う。
過剰な形式主義に堕してしまって、逆に皇室を国民から縁遠い存在にしてしまうことは、恐らく皇室の方々のお気持ちにも背くことになるだろう。
それでも、敬宮殿下が傍系の宮家のお子様方とは区別され、特にご称号を持っておられる事実については、決して見逃すべきではあるまい。
追記
プレジデントオンラインの連載「高森明勅の『皇室ウォッチ』」は、敬宮殿下のご会見を取り上げた特別原稿と今月分の原稿が、24日・25日と連続で公開予定なのでお伝えしておく。