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執筆者の写真高森明勅

天皇陛下ご一家が仲睦まじく伝統のご養蚕作業を行われた




皇室において伝統的に“皇后のお務め”とされて来た「ご養蚕(ようさん)」。



しかし平成時代には、上皇・上皇后両陛下がおそろいで、蚕(かいこ)の繭(まゆ)を繭づくりの専用器具である蔟(まぶし)から掻(か)き取る「収繭(しゅうけん、“繭掻き”とも呼ぶ)」作業に当たられていた。


先頃、天皇陛下ご一家におかれては、皆様“総出”で養蚕に関わるいくつかの作業を行われた。


まず6月1日、皇居内の紅葉山御養蚕所(もみじやまごようさんじょ)で皇后陛下が「給桑(きゅうそう、蚕にエサの桑を与える)」や「上蔟(じょうぞく、蚕を繭になるための蔟に移す)」などの作業を行われた際、天皇陛下と敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下もご一緒に作業をされた。


更に同11日、皇后陛下による「初(はつ)繭掻き(最初の収繭作業)」の後、天皇陛下、敬宮殿下がお加わりになり、「毛羽(けば)取り(繭の周囲にある毛羽を取る)」や「繭切り(繭の中で成虫になった蚕が外に出やすくなるように、繭の両端を切る)」の作業をご一緒になさった

(さらに、先立つ5月19日の御給桑の際にも天皇陛下がご一緒されていた)。


このように、ご養蚕に関わるいくつかの作業を天皇陛下ご一家がご家族総出で行うことは、おそらく前例がないはずだ。


これには、それぞれ1日と11日の2回とも、皇后陛下の体調が整わず、期日を延長した事実に照らして、皇后陛下をご負担を軽減しようとされた、という事情が考えられる(皇后陛下におかれては、くれぐれもご無理をなさらないように願いたい)。


また、敬宮殿下は生き物好きで、学習院初等科の頃からお住まいで、ご自分でも蚕を飼ってこられた点も、見逃せない。側近の説明は以下の通り。


「陛下は歴史的観点からご興味をお持ちで、また、ご一家でご一緒になさることを楽しまれる

お気持ちの表れではないか」(1日)


「陛下として、ご家族としてお支えなさりたい気持ちと、とても仲が良いご家族なので、お三方の作業をお楽しみになりたい気持ちもあると思う」(11日)


先日の、敬宮殿下が成年を迎えられた際の記者会見でのご発言から、ご家族がどれだけ仲睦まじくいらっしゃるかは、たやすく想像できる。お三方ご一緒の作業では笑顔が弾けていたという。

皆様がいかに楽しく幸せな時間を過ごされたか、拝察するに難くない。


さらに、上皇・上皇后両陛下がご一緒に収繭に携わられた前例も踏まえ、“令和流”としてご家族そろって様々な作業を行われたことで、将来もし女性天皇が即位されても、ご養蚕の在り方をめぐり男女の役割分担を固定的にとらえて、無用な混乱を生じる虞れはほぼ無くなったと言える。


あるいは、天皇陛下はそうした可能性もあらかじめ考慮された上で、さりげなく一つずつ手を打たれているのではあるまいか。

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