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執筆者の写真高森明勅

旧宮家プランは“憲法の要請”でない故「門地差別禁止」に違反



いわゆる旧宮家系国民男性だけが婚姻を介さないで“特権的”に皇族の身分を取得

できるように制度を改めるというプラン。


これは、「男系男子」による皇位継承という憲法の下位法にすぎない“皇室典範の要請”

(それは決して憲法そのものの要請ではない!)を、「門地(家柄・家格)による差別禁止」という上位にある“憲法の要請”より優先しようとするもの。だからもちろん憲法上アウト。


一方、「皇位の世襲=皇統(天皇のご血統、男子・女子、男系・女系を含む)による親→子→孫という親子関係を基本とした(直系優先による)皇位継承」という憲法の要請は、明らかに天皇のご血統、皇室という家柄=門地を特別扱いするもの。


だがそれは、憲法における「門地による差別禁止」という“一般規定”に対して、憲法自体(!)に設けられた“例外規定”に根拠を持つので憲法上、もちろん許容される。当たり前だ。


そうであれば、皇位の「世襲」継承という“憲法の要請”に応じて、皇室典範を改正し女子・女系の継承資格を認めても(これが前提)、なおかつ皇位継承が至難になり、皇室内に婚姻を介して国民から皇族になられた方はおられても、「皇統に属する」皇族が不在という“極限的な局面”では、既に国民となった「皇統に属する子孫」が男系・女系、男子・女子の区別なく、“直系に最も近い方(!)”から順番に皇籍取得の対象とすることは、憲法の例外規定に根拠を持つ措置として当然、一般規定としての「門地による差別禁止」から除外され得る。


国民が皇籍を取得すること自体が、そのまま憲法違反になるのではない。

そのことは、これまで婚姻による皇籍取得が普通に行われてきた事実からも、明らかだ。

この場合、その婚姻の対象が(旧宮家など)特定の家柄に“限定されない”ことから、もとより

「門地による差別禁止」に抵触しない。憲法違反かどうかは、改めて言うまでもなく“憲法の要請”との関わりで判断されるべきことだ。


しかし、にわかに信じられないことながら、憲法それ自体の要請と下位法である皇室典範の要請とでは、優先度に明確な違いがある、つまり、憲法の一般規定の適用を免れ得るのは憲法自体の例外規定に根拠を持つ場合だけという、分かりきった事実にまるで気づいていない人がいるらしい。


そこを混同して、皇室典範の要請にしか根拠を持たない(=憲法の例外規定に根拠を持たない)憲法違反の“旧宮家プラン”を擁護しようと、空しく悪戦苦闘している人たちだ。


皇位継承資格の「男系男子」限定を前提とした旧宮家プランが憲法違反でないことを主張するには、それが法律である“皇室典範の要請”を越えた、最高法規である“憲法の要請”であることを論証する必要がある。


しかし、憲法の要請はどこまでも「皇位の世襲」=皇統(男子・女子、男系・女系を含む)による皇位継承。よって、遂にその論証は成功しない、という気の毒な事情がある。


それは憲法の要請なのか?それは憲法の例外規定に根拠を持つのか?旧宮家プランを唱える場合、「門地による差別禁止」を免れる為には、上記の問いに説得力のある“イエス”の回答を用意しなければならない。

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