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執筆者の写真高森明勅

皇位の安定継承は皇室ご自身の強いご念願に他ならない


皇位の安定継承は皇室ご自身の強いご念願に他ならない

皇位の安定継承が“絶対に”可能という制度はあり得ない。

しかし、皇室典範が抱える「構造的な欠陥」によって、皇室の危機が目の前に迫っている以上、

少しでも安定的な制度を目指して最大限の努力を払うのが、皇室典範の改正が「国会の議決」とされている今の憲法の下では、国民として当然の責務だろう。


それは何よりも皇室ご自身のご念願だ。


これまでに何度も掲げさせて戴いている、上皇陛下がご退位へのお気持ちに滲ませられた時の

ビデオメッセージ(平成28年8月8日)の締め括りの部分を思い起こせば、誰しもその事実に直面することになるはずだ。


「このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私気持ちをお話しいたしました。国民の理解が得られることを、切に願っています」


この切なるお呼び掛けに、国民として真剣にお応えするのか、どうか。


昨年のお誕生日に際しての天皇陛下の記者会見でのおことば(令和4年2月21日)も当然、上皇陛下のお気持ちを踏まえたものだった。


「皇室の歴史を紐解(ひもと)くと、皇位が連綿と継承される中では、古代の壬申の乱や中世の南北朝の内乱など皇位継承の行方が課題となった様々な出来事がありました。


そのような中で思い出されるのは、上皇陛下が述べておられた、天皇は、伝統的に、国民と苦楽を共にする精神的な立場に立っておられた、というお言葉です。


このお言葉に込められた思いは、ひとり上皇陛下のみのものではなく、歴代の天皇のお考えに通じるものと思います。…その思いと共に皇位を受け継いでこられた、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、研鑽(さん)を積みつつ、国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての務めを果たすべく、なお一層努めてまいりたいと思っています」


皇位の安定継承とは皇室のご安泰、弥栄(いやさか)そのものである。


「君が代は、千代に八千代に…」である。

それは、国民生活の安寧の基礎である国の秩序の安定と継続を意味する。心ある国民として、それを真摯に願うのは、当たり前だろう。にも拘らず、それを絶対的に可能にする制度などはあり得ないとして、端から軽視するような人が仮にいたとしたら、残念ながらそのような人とは実りのある対話などとても望めないだろう。


皇位継承問題を真面目に考えようとする場合、最低限、共有されるべき着眼点は、差し当たり以下の通りだろう。


①皇位の安定継承=皇室のご安泰を目指す。


②皇室の方々のご真意を謙虚に拝察し、それを最大限尊重する。


③悪しき前例踏襲、思考停止の先例主義を排し、皇室がこれまで長期にわたって存続することを

可能にして来た、前例・先例を果断に乗り越えるしなやかさ・したたかさから積極的に学ぶ(そもそも皇室制度を巡る現状は、非嫡出子・非嫡系子孫の皇位継承可能性を全面的に排除した前例・先例の無い“窮屈この上ない”条件下なのに、明治の皇室典範以来の皇位継承資格を「男系男子」に限定する歴史上かつてない“窮屈この上ない”ルールにしがみつくという、「先例主義」自体からも認められないような自滅的ミスマッチが見逃されている)。


④憲法の要請に立脚する(〇「世襲」=女子・女系を含む皇統による継承、〇天皇の「象徴」としての超越性、皇室の聖域性を支える国民との厳格な区別、〇国民平等の原則=“門地”などによる差別禁止)。


これらが建設的・生産的な議論の土台だろう。

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