引き続き近況の一端。
2月11日、国民の祝日の1つ「建国記念の日」。
例年、「くにまもり演説大会」の審査員を拝命している。
今回は第16回大会で、会場はTFTホール1000だった。
約千人入る会場がいっぱい。更にオンラインでの参加が約500人。合計で約1500人が参加してくれた。参加者は主に20代·30代の若者達。それぞれ会場参加の場合は3千円、オンライン参加の場合は2千円の参加費(若い世代にとっては安い金額ではなかろう)を払っての、まさに自発的な参加だ。いわゆる“組織的な動員”などでは勿論ない。
去年の弁士で、その時は妊婦だった女性が、今年はベビーカーに当時お腹の中にいた赤ちゃんを乗せて、フロアに参加していた。
弁士の参加資格は20代まで。今年は1374名が応募して、そのうち112名が第1審査で残り、25名が第2次審査を通過、最後の第3次を突破した8名が弁士として登壇する。
応募者の内訳は、約6.5割が男性で、約3.5割が女性だったようだ。しかし、最後まで残った8名のうち、女性が7名、男性は1人だけという状態だ。いつも女性優位ではあるが、今年はそれがより明確化した。来年は果たして男性が本戦まで残れるか。
プロのアナウンサーとか小学校教師として既に高い評価を得ている人とか、多くの地方議員と接触して地元の課題への取り組みを続けている人など、さすがに最後まで残った弁士のレベルは高い。
開会に当たり、何人かの国会議員の祝電が披露された。その最初は野田佳彦元首相からのもの。
言葉の大切な役割は、立場や考え方が違う相手を論破するよりも、互いに一致点を探ることにある、といった野田議員らしい内容のメッセージだった。
優勝者は、ただ1人の男性だった現役の大学4年生。
取り立てて弁論術が優れていた訳ではない。フードロス削減の具体策として、せっかく育った野菜の3割から4割が“規格外”として廃棄されている現状に目を向け、それらを移動販売という手段で利益に転換する実証実験を行い、首尾よく成果を挙げ、その方面の創意工夫を競う公的な
コンクールで全国から約1500のチームが応募した中で、第1位を獲得した。その実績と今後への展望をテンポよく、聴衆をワクワクさせる語り口で語り切ったことが評価された。
準優勝の女性も大学4年生。
聴覚障害による引け目をデフ陸上(聴覚障害者の陸上競技)との出合いによって乗り越え、遂にデフリンピックの日本代表に選ばれたことを語った。それまで演壇の聴衆に見えない位置に置かれていた、日本代表のユニホームを誇らしげに高々と掲げた場面では、会場に大きな感動を呼び起こした。
彼女の演説の中で、「この聴覚障害という“強み”を活かし…」というフレーズがさり気なく出てきた瞬間が、私には印象的だった。自ら障害による苦しみを乗り越えた経験を持つからこそ、同じようにハンディキャップを背負う人たちに希望と勇気を与えられる、という自負による発言だろう。
第3位も大学3年生。
3人の入賞者が全員大学生というのは、私が審査員を仰せつかって長くなるが、初めてだ。
イチゴなどの受粉を仲介するクロマルハナバチが準絶滅危惧種に指定されている中、ドローンを利用して受粉を助けるアイデアを思い付き、世界でも前例のない実験に教授のサポートを得て挑戦し、見事に成功させている。彼女も弁論の上手さというより、スマート農業という未来に向けた行動と実績が評価された。
3位までに入らなかった弁士も、清酒·サブカルチャー·不登校問題·特攻隊·減税など多様なテーマを取り上げ、しかも単なる知的関心の対象ではなく、自らの実践を踏まえた発言になっていて、どれも聴き応えがあった。
頼もしい若者達が現れていることは嬉しい。
私も改めて自分がやるべきこと、今しなければならないことに全力を傾けなければと覚悟を新たにした。
ある審査員が講評の中で、自分で組み立てた意見や考え方を一度「壊す」ことの大切さを指摘していた。適切なアドバイスだろう。視野の狭い独り善がりな意見に陥らない為には、自分の考えを一旦、相対化·対象化して、敢えて外側から批判的·否定的に吟味し検証するという思考のプロセスを踏むことが、有益だ。
それと是非とも付け加えて置きたいのは、当日の入賞者などへの記念品が、去る1月1日の能登半島地震で大きな被害を被った石川県の特産品で統一されていたことだ。審査員などへの土産も、例年の虎屋の羊羹ではなく、今年は金沢の「森八」に変更するという徹底ぶりだ。主催者の見識に敬意を表したい。
2月14日、弁護士JPニュースの取材を受ける。皇位継承問題ど真ん中の取材。
2月23日「天皇誕生日」に公開の予定。新聞や週刊誌その他メディア関係の取材を受けるたびに、皆さん私のブログを丁寧に読んでくれていることが分かる。これは有難い。