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執筆者の写真高森明勅

遠い男系より近い女系が大切だと分かっている「男系」論者


遠い男系より近い女系が大切だと分かっている「男系」論者

以前、こんな経験をした。


小さな集まりで、“旧皇族”を名乗る竹田恒泰氏を尊敬しているらしい女性がおられた。私が、テレビ番組などで彼と対立していたことは、ご存じないようだ。


「竹田様は何しろ天皇の血筋を引いておられるから、私のような者がお側でお話ができるだけであり得ない経験だと思います」とおっしゃる。どこかで本人と会われたのだろうか。


そこで私から簡単な質問をさせて戴いた。


「天皇の血筋というと、どなたの血筋なんですか?」

すると、分かり切ったことを尋ねる私に、少し軽蔑的な眼差しを向けながら答えてくれた。


「そんなこと、皆さんご存じではないですか? 明治天皇です。(平成時代だったので)今の天皇陛下のひいおじいさんに当たられる方です」


「でも、それは明治天皇のお嬢様(第6皇女・昌子内親王)によって繋がっているので、『女系』を介した血筋ですよね」


「え?」


「ですから父親→父親→父親という男系“だけ”の繋がりでは、明治天皇とは縁もゆかりもないのではありませんか?」


「あら!」


「竹田さんは父親→父親→父親という男系ではどの天皇の血筋なのですか?」


「それは…」


「竹田さんご自身は『女系なんて意味はない』、『女系が混じればそれは“雑系”だ』とかおっしゃっています。でも明治天皇とは“女系を介して”しか繋がらない。ご本人の言い方では“雑系”のはずの明治天皇の玄孫(!)ということばかり、盛んに吹聴される。その一方で、男系で繋がる天皇について、ご自身からほとんど語らない。なので、ご存じなくて当たり前ですが、何だか不思議ですよね」


恐らく竹田氏はよく分かっているのだろう。男系の血筋であっても、20世以上も世代が離れ、時代的には600年以上も昔の天皇(北朝第3代・崇光天皇)と繋がっているだけでは、もはや親の代から皇族ではない以上、それ“だけ”を根拠としてはほとんど誰からも敬って貰えず、一方、女系であっても、天皇との血縁が近ければ(玄孫ならば4世)、多くの国民に(竹田“様”として)特別視して貰える…と。


つまり、表向きの言い分とは裏腹に、男系・女系の区別よりも天皇との“血縁の近さ”こそが大切な意味を持つという事実を、本音としてはしっかりと理解している。そうでなければ、自ら否定しているはずの女系“のみ”で繋がる明治天皇の玄孫という肩書き(?)を、これまで最大のアピールポイントとして名乗り続けるなんてことは、そもそもあり得なかったはずだ。

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