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執筆者の写真高森明勅

共同通信が各地の新聞に配信した皇位継承問題を巡る対立見解


共同通信が各地の新聞に配信した皇位継承問題を巡る対立見解

先頃、共同通信の「奏論」シリーズで「皇位継承問題」というテーマを取り上げ、加盟各社に配信された。憲法学者の百地章氏と私へのインタビューを担当記者がまとめた記事だ。

それを掲載した地方紙の一部が送られて来た。 岩手日報(9月25日付)、日本海新聞(9月27日付)、静岡新聞(9月30日付)、中国新聞(10月1日付)、秋田さきがけ(10月4日付)、神戸新聞(10月5日付)、佐賀新聞(10月5日付)、福井新聞(10月9日付)など。

担当記者の後記はこう締め括られている。「立場が違う高森、百地両氏だが、両者に共通する認識は政治家の危機感の薄さだ」と。

結果的に良いタイミングでの記事になったのではないか。

以下、それぞれの意見の一部だけを紹介する(なお記事中の敬称などは全て共同通信社の用語法による)。

百地氏= 「まず皇室の伝統ですが、126代の天皇は全て男系で継承されてきました。…皇位継承の危機を何度も乗り越え、男系天皇による継承を維持してきました。2000年続いてきた男系の重みは、他国の王朝でも例を見ない貴重な伝統です」

「歴代政府も『男系』とは断定していませんが、『男系重視』の立場を繰り返してきました」

「愛子さまは男系ですが、次の天皇は秋篠宮さまと決定しており、悠仁さまもいるのに、皇室典範を改正してまで継承資格を与えるのは疑問です。もし愛子さまが皇位継承資格を持ち、結婚して出産すれば女系の子どもが生まれることになります。女系の天皇を認めてしまえば、男系男子で皇位が継がれてきた皇室の伝統は崩壊し、憲法違反の恐れもあります」

「旧宮家出身の男子は『皇統に属する男系男子』に当たります。歴史的にも宮家から即位した天皇はいます。旧宮家子孫で現在、未婚の男子が少なくとも10人前後いるとみられます。この中からふさわしい方を何人か宮家の養子に迎えれば、男系男子の皇位継承資格者を確保できます。当事者や家族の意向確認も重要です」

「(旧宮家は)天皇家と歴史的につながる家柄なので国民の理解は得られるのではないでしょうか」

「憲法が禁ずる『門地による差別』ではないかとの批判は当たりません。皇位の世襲を維持し、男系男子を確保するためであり、判例や学説で認められている『合理的な区別』と言えるからです」

高森= 「女性皇族が皇位に就けるよう直系優先の継承制度にすべきです。『国民統合の象徴』という天皇の地位の面でも理にかない、皇位の安定継承が目的です。 現憲法も皇位を世襲と規定し男性や女性、男系、女系(母方が天皇の血統)という区別はしていません。この制度改正が実現すれば次の天皇は愛子さまです。 『女性天皇は認めるが、女系天皇は認められない』という考えは現実的ではありません。女性天皇が結婚したのに、子どもに皇位継承資格を与えないのは制度的整合性を欠きます」

「史上10代8人の女性天皇がおり、律令に規定があった『女帝の子(母だけ天皇)』が即位した実例(元正天皇)まで男系継承と見るのは無理です」

「女性天皇が制度として排除されたのは明治からに過ぎません。側室とセットでなければ男系は維持できず、男尊女卑の考えが強く残っていた時代の遺物です。大切なのは男系、女系より皇統による継承だったといえます」

「旧宮家の子孫の皇籍取得を今の皇族との『養子縁組』によって可能にしようとする案がありますが、生まれた時から民間人なのに旧宮家系という家柄、血筋だけを根拠に他の国民には認められない特別な扱いを受けるのは、国民平等の理念を損なうという根源的な問題を抱えています。

実際、皇籍取得を受け入れる旧宮家子孫はどれだけいるのでしょうか。受け入れる当事者が曖昧なままです。政府も国会で旧宮家当事者の意向を『これまで確認していないし、今後も確認しない』と答弁しています。強制は許されないので実現可能性の点でも疑問です」

【高森明勅公式サイト】 https://www.a-takamori.com/

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