皇位継承問題の取材を続けている記者から連絡を受けた。岸田政権がこの問題の解決に熱心だとはとても思えないという。これまで、歴代内閣が「最重要課題」と連呼しながら事実上、放置して来た拉致問題と同じように、口先だけではないか、と。
なるほど、現場の記者の受け止め方はそうなのかも知れない。しかし、私の感触は少し違う。
むしろそうであればこそ、真の問題解決とはほど遠い手前のとろで、“目先だけの決着”を急ぐ虞(おそ)れがあるのではないか。
○今年2月の自民党大会での岸田首相の呼びかけ→
○9月の役員人事での萩生田政調会長への指示→
○萩生田氏の「受け皿」表明→
○10月20日の額賀新衆院議長の記者会見での発言→
○同23日の所信表明演説→
○同27日、自民党が皇位継承策を検討する総裁直属機関の新組織を設ける方針との報道。
以上の経過は、これまでに例がないことだ。
だからといって楽観はできない。衆院解散という不確定要素を除き、先に言った危うさを否定
できないように思える。
その場合、最悪のシナリオは有識者会議報告書の提案を丸呑みすること。特に、内親王·女王がご婚姻後も皇族の身分にとどまられながら配偶者やお子様が「国民」というプランは、決して認められない。
厳格であるべき皇室と国民の区別をないがしろにし、天皇·皇室の日本国·日本国民統合の「象徴」としてのお立場と決定的に矛盾し、当事者の“家族としての一体性”を破壊する、最低最悪な制度だからだ。
やっと事態が動き始める可能性が見えて来た今こそ、皇室を敬愛しその弥栄を願う国民の真剣な取り組みが求められる。
追記
10月27日に公開のプレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」で、いよいよ迎えた目の前の重大局面について分析した。