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執筆者の写真高森明勅

皇室の伝統は男系継承でなく「国民と苦楽を共にする」こと


皇室の伝統は「男系継承」という意見を時折、耳にする。しかし、皇室ご自身のお考えは違う。


それがはっきりと示されたのは平成17年に小泉純一郎内閣の時に設けられた「皇室典範に関する有識者会議」の報告書が提出された場面でのこと。

同年の天皇誕生日に際しての記者会見で、記者側から次のような質問が出された。


「皇室典範に関する有識者会議が、『女性·女系天皇』容認した方針を打ち出しました。実現すれば皇室の伝統の一代転換となります。陛下は、これまで皇室の中で女性が果たしてきた役割を含め、皇室の伝統とその将来についてどのようにお考えになっているかお聞かせください」

これに対する上皇陛下のお答えは以下の通り。

「皇室の中で女性が果たしてきた役割については私は有形無形に大きなものがあったのではないかと思いますがに皇室典範との関係で皇室の伝統とその将来についてという質問に関しては、回答を控えようと思います。


私の皇室に対する考え方は、天皇及び皇族は、国民と苦楽を共にすることに努め、国民の幸せを願いつつ務めを果たしていくことが、皇室の在り方として望ましいということであり、またこの在り方が皇室の伝統ではないかと考えているということです。


女性皇族の存在は、実質的な仕事に加え、公的な場においても私的な場においても、その場を空気に優しさと温かさを与え、人々の善意や勇気に働きかけるという、非常に良い要素を含んでいると感じています」


国政権能を有されない憲法上のお立場に慎重な配慮をされながらも、「女性天皇·女系天皇を認める報告書の提案に従って皇室典範の改正がなされても、皇室の伝統そのものに何の差し障りもない」というお考えが、かなりストレートに伝わる言い方をなさっていたことに気付く。


皇室の伝統とは狭い男系継承ということではなく、ひたすら「国民と苦楽を共にすること」である、と。


皇室の伝統をどう理解するかについては、国民が各自勝手な私見を振り回すのではなく、皇室ご自身のお考えを最も尊重するのが当然だろう。


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