11月17日、衆院内閣委員会で立憲民主党の馬淵澄夫議員が引き続き皇位の安定継承を巡り、内閣法制局の見解を質された。
内閣法制局は旧宮家養子縁組プランの合憲性を説明するのに、当初は別の答弁を模索していたようだ。「皇族数の減少という特殊な状況」を根拠にするつもりだった。
これならば、有識者会議報告書における議論の枠を「皇族数の確保」に限定するという方針とも、整合的だった。
しかし、内親王·女王などに皇位継承資格を認め、婚姻後も皇族の身分を保持するというセットの 制度改正を行えば、「国民平等」の原則に抵触することなく、より確実に皇族数を確保できるのに、それには手を着けないまま養子縁組プランに踏み出すことを果たして正当化できるのか、 という追撃が予め予想された。
そこで、去る11月15日の実際の答弁では、
①天皇·皇族は憲法によって国民平等原則の例外扱いが認められ、 ②その皇族の範囲は法律に委ねられているので、 ③法律によって旧宮家系男性を皇族とすれば ④例外扱いは認められるーと苦し紛れのすり替え答弁を行った。
しかし、一般国民の中から旧宮家系という家柄·血筋つまり門地だけを根拠としてそのような立法を行うこと=③自体に憲法違反の疑いが突き付けられいるので、答えになっていなかった。
そこで17日、内閣法制局は馬淵議員からの再質問に対し、憲法が皇位の「世襲」などを要請しており、その憲法の要請に応える為の立法は正当化できるーという趣旨の答弁を行った。これによって、検討対象は「皇族数の確保」“だけ”という有識者会議報告書が設けていた無理な狭い議論の枠を、一挙に乗り越えた。
政府がずっと避けたがっていた世襲=「皇位の安定継承」という本筋の議論へと、他でもない内閣法制局自身が道を開いてくれたことになる。これは政府側からすれば内閣法制局の失態かも知れない。しかし、憲法の世襲要請を持ち出す以外に立法を正当化する方法が無かったのだから、やむを得ない。
ちなみに、憲法の「世襲」概念には男性·女性、男系·女系の全てが含まれるというのが、政府見解であり学界の通説だ。だから当然、憲法自体は男系男子“限定”による継承を要請している訳ではない。
政府が自ら「憲法の世襲要請に応える為」という立法“目的”を明らかにしたのであれば、養子縁組プランという立法“手段”はその目的に照らして有効·適切なのかどうか、その目的の為に養子縁組プランよりも遙かに有効·適切で、国民平等原則とも抵触しない手段が他に(!)ないのかという議論から、もはや逃げられなくなる。
女性天皇·女系天皇·女性宮家の制度化と養子縁組プランの一体どちらが、国民平等原則と両立できて、皇位継承の安定化という目的の為に有効·適切な手段なのか。そうした議論を回避したままでは、旧宮家プランの正当性を吟味することすらできないという事実を、内閣法制局が示さざるを得ない地点にまで追い詰めたのは、馬淵議員の大きな功績と言うべきだろう。しかし、政府は自民党内の良識派、野党の良識派、国民の良識派が沈黙していたら有識者会議報告書のまんまで押し切るつもりだろう。
追記
11月25日、東京·池袋駅西口徒歩5分の豊島区医師会館4階にて「皇位継承問題の現在地」という 演題で午後3時〜5時まで、小さな講演会を予定している。参加費は千円。事前の申込みは不要。 個人的な依頼で引き受けた。ささやか勉強会でも、初心者にも分かりやすく最新の知見を披露するつもりなので、関心のある方は広くご参加戴きたい。