皇位継承問題の行方がどうなるのか。
岸田政権が崖っぷちに立たされている現在、甚だ視界不良になっている。
今年の政治動向で特筆すべきは、岸田文雄首相の主導によって、皇位継承問題が100点満点の解決かどうかは勿論予断を許さないが、とにかく1つの区切りを目指して動き始めた、という事実だ。
その場合、岸田首相が来年9月に自民党総裁選に臨む“前”に、何らかの決着を見ると考えるのが常識的。
そうすると、更にその“前”に、衆参両院議長の呼び掛けにより「立法府の総意」が取りまとめられる必要がある(額賀福志郎衆院議長の就任に際しての記者会見での発言を見ると、既に岸田氏の意向も伝わっていたようだ)。
その両院議長の呼び掛けで国会の全政党·会派が集まる全体会議において、自民党がイニシアティブを握る為には、その会議招集より“前”に自民党内の意見集約がなされていなければならない。
その意見集約の場が、先ごろ新設された総裁直属機関の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」(麻生太郎会長)なので、同懇談会で結論を出すタイミングも、来年9月の総裁選から逆算すればおよそ見極められるはずだった。
ところが、岸田内閣の支持率がドンドン下落して、自民党総裁選を来年9月に行うと、国民人気を反映する党員投票によって、これまでの主流派(麻生派·茂木派·岸田派·安倍派)が望まない候補者(例えば石破茂衆院議員)が総裁→首相になりかねないので、党員投票がない前倒しの臨時総裁選が企てられていて(その場合の本命は茂木敏充幹事長という見方が有力)、それが来年度の予算が成立し、岸田氏が国賓待遇での訪米を済ませた3月か4月頃という見方が、早くから語られていた。
そこで私は、皇位継承問題を少しでも解決に近付けるべく、国民の側から政治プロセスに働き掛けられるのは、どんなに遅くても来年9月まで、早ければ3月·4月までが一応のメドと見立てていた。
しかし目の前の岸田政権は、派閥の政治資金パーティーを利用した裏金作りの発覚により、逆風がより厳しくなる中で安倍派という政権を支える柱の1つを失いかけており、一層追い詰められているように見える。
果たして、現在の窮状を跳ね返せるのか、どうか。もし跳ね返せなかった場合、今年に入ってからの事態転換を主導してきたのが岸田氏だっただけに、再び膠着状態に逆戻りする虞れも否定できない(差し当たり12月15日に予定されていた上記懇談会の2回目の会合は延期されている)。
勿論、誰が次の首相になっても、その人物にほんの僅かでも理性的な判断力があれば、もはや先延ばしできない問題の重大さと切迫性を理解できるはずだが、これまでの経緯を顧みると残念ながら楽観はできない。しかし、どのような局面を迎えても、国民としてやるべきこと、できることは、大きく変わらないだろう。
政治への働き掛けとしては、自民党内の良識派をはじめ与野党を問わず良識ある政治家に、皇位継承の安定化を目指す皇室典範の改正を、真剣に丁寧に訴えること。それに尽きる。大きく全体状況を視野に入れつつ、それぞれの持ち場や能力、条件に応じた「分担使命」を、各自ができる範囲で果たしていく以外にないだろう。
【追記】
12月14日、プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」が公開され、Yahoo!にも配信された。https://president.jp/articles/-/76551