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執筆者の写真高森明勅

旧宮家男子養子縁組案は憲法の世襲要請に応えられず門地差別


旧宮家男子養子縁組案は憲法の世襲要請に応えられず門地差別

皇位継承問題の解決を図る時、どのような政治的·思想的な立場であっても、最低限、憲法に適合する解決策を探らなければならない。それが大前提だ。


そこで念の為に、旧宮家男子養子縁組プランについておさらいしておく。


昨年(令和5年)11月17日の衆院内閣委員会で馬淵澄夫議員が同15日に続き、有識者会議報告書が提案した同プランの合憲性(憲法第14条が禁じる「門地差別」に当たらないか)について、質問された。


これに対して内閣法制局の木村陽一第1部長は、憲法第2条の「皇位は世襲」という要請に応える為なので「憲法自体が許容している」との答弁を行った。しかし報告書(12ページ)に明記してあるように、養子本人は皇位継承資格を持たず、養子縁組の時点で連れ子がいても皇族とはされない。


更に縁組後、男子が生まれても皇位継承資格を持つのか否かは、空欄のままになっている(これについては既に皇族の身分を保持している父親が持ち得ない資格を子供だけに認められるのか、

という問題も生じる)。


よって、報告書のプランでは世襲要請に何ら応える中身になっていない。


つまり、“憲法の要請に応える”という「目的」はそれなりに正当であっても、門地差別という憲法違反の疑いを払拭するには、通説的な違憲審査基準に照らして、その目的を達する「手段」

として“是非とも必要=必要不可欠(!)”であらねばならないが、同プランの場合は必要不可欠どころか、僅かな合理的関連性すら持たない。


そもそも、憲法が要請する「世襲」には男性·女性、男系·女系の全てが含まれるというのが、政府見解であり学界の通説だ。


こうした世襲概念を踏まえて、憲法の要請に応える為には、側室が不在で、非嫡出·非嫡系継承が除外されている(しかも少子化)という条件を前提とする限り、憲法の下位法である皇室典範を改正して皇位継承資格の「男系男子」限定というミスマッチな“縛り”を解除することこそが、真に「必要不可欠」と言える。


他に、より憲法に適合的でしかも遥かに有効な手段が存在する以上、旧宮家養子縁組プランは違憲審査基準をクリアできない。やはり“一発アウト”なのだ。


なお、憲法学者の百地章氏が内閣法制局の答弁に触れて、合憲論を繰り返しておられる(産経新聞1月11日付)。しかし、最高法規である憲法の“門地差別禁止”規定よりも、下位法の皇室典範第1条の“男系男子限定”規定を優越させるという、逆立ちしたロジックなので、残念ながら支持できない。


旧宮家男子は、皇統譜に登録される皇室の方々とは厳格に区別され、戸籍に登録された一般国民なので、当然「法の下の平等」がそのまま適用されるし、生まれた時から国民であるにも拘らず、旧宮家系という家柄·血筋=門地だけを根拠として皇室典範で他の国民には禁止されている皇族との養子縁組(第9条)を例外的·特権的に認めることは、とても「合理的区別」とは見なし難い。


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