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執筆者の写真高森明勅

皇位継承問題「皇族+国民」世帯か「女性天皇·女性宮家」か


皇位継承問題「皇族+国民」世帯か「女性天皇·女性宮家」か


長年の懸案だった皇位継承問題が一応の決着を迎える可能性が見えてきた。

ただし、今回の動きが予め女系天皇という選択肢を排除した地点からスタートしている以上、残念ながら100点満点の決着にはならない公算が大きい。想定し得る最低最悪のケースは、有識者会議報告書が提案したプランがそのまま制度化されることだ。


内親王·女王方が婚姻後も皇族の身分を保持される(但し皇位継承資格は認められない)一方、その配偶者やお子様は国民という位置付けになる。


皇族と国民が“1つの世帯”を営むという、皇室と国民との厳格な区別を踏みにじり、皇室の「聖域」性を致命的に損ないかねない、愚劣この上ないプランだ。


しかしその場合、国会の存在意義が厳しく問われることになる。


国会は全会一致の附帯決議によって、政府に対して「安定的な皇位継承」「女性宮家」についての検討を求めた。にも拘らず、政府から国会に示された有識者会議報告書では、問題を“皇族数の確保”にすり替え、本来の課題に対しては全くの白紙回答(!)だった。


それをそのまま追認することは、憲法に根拠を持ち、「国権の最高機関」(第41条)にして国民の代表機関(第43条)であるべき国会が、法令に根拠を持たず、首相の決裁だけで設置された私的諮問機関に過ぎない有識者会議の、“下請け”組織に成り下がったことを証明するに等しいからだ。


しかし、差し当たり女系天皇の可能性を排除するということは、女性天皇は必ずしも除外しないということを意味する。従って、今回の決着での現実的な合格ラインは、女性天皇の制度化

ということになろう。


改めて言う迄もなく、女性天皇の可能性を支える為には当然、女性宮家も不可欠だ。具体的には、内親王·女王にも皇位継承資格を認め、婚姻後も皇族の身分を保持されるのは勿論、その配偶者やお子様も(男性宮家と同じく)皇族の身分を保持されるという制度だ。


従って、皇位継承問題を巡る当面の最大の焦点は、政府の「皇族+国民」世帯という不条理かつ非常識極まるプランの押し付けに対して、国会が(国民の後押しを得て)附帯決議の趣旨を守り、どこまで「女性天皇·女性宮家」を認める制度に近付けられるか、という一点にあるだろう。


国民としてできること、なすべきことは、まだまだ残っている。

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