産経新聞(3月24日付)に「皇位継承議論 進展へ道筋」という記事が載った(内藤慎二記者ほかの署名記事)。
自民党の次回懇談会の検討内容についての見通しを書いている。
「旧宮家に連なる人々が女性皇族との結婚や養子入りを通じて、旧秩父宮家、旧高松宮家、旧桂宮家を継ぐケースなどを想定しているとみられる。自民党幹部は『新たに宮家を設けることにはならないので負担を抑制できる』と語る」
呆れる。
自民党幹部は、皇室の存続それ自体が危機に瀕しようとしている局面でも、「負担の抑制」だけを
最優先に考えているのか。
宮号の下賜は、専ら天皇陛下の思召によることなので、以前に用いられた宮号を再び別の皇族に賜ることは、理論上は可能だ。しかし、それを国民の側からあれこれ指図するようなことは、
決してあってはならないはずだが、自民党はそれを敢えて行おうとしているのか。
更に、仮に旧秩父宮家などを継承する形式でも、皇室経済法の規定(第6条)に従って支出される皇族費の金額に変更はないし、又「皇族としての品位保持の資に充て」て戴くのが主旨だから、変更があっては困る。この自民党幹部は、負担の抑制を最優先課題としながら、皇室経済法すら読んでいないのか。
又、記者もコメントと皇室経済法との齟齬に気付かなかったのだろうか。しかしそれら以上に、旧秩父宮家などを継承する際に、女性皇族とのご結婚や養子縁組を「通じて」とあるのは、見逃せない。制度設計自体が、未婚の内親王·女王方のご結婚相手を政治家が決める非人道的な思惑を前提としているプランなど、そもそも論外ではないか。非礼·不敬にも程がある。
ネット上の匿名の書き込みならまだしも、政権与党たる自民党の総裁直属の会議体で検討課題になり得るプランとして、一般紙に報じられたことに衝撃を受ける。
女性皇族といわゆる旧宮家系男性子孫の露骨な「政略結婚」の強制(!)によって、とっくに廃絶した旧(秩父宮家など)宮家を「継承」するというアクロバットを、良識を備えた国民は
一体どう見るだろうか。女性皇族との養子縁組の場合は、その養親は恐らく「皇統に属する」内親王·女王に限定されるだろう(国民から男性皇族との婚姻を介して皇籍を取得された妃殿下方は皇統に属しておられないので除く)。
しかし“未婚の”女性皇族に対して、“独身の”国民男性が婚姻でなく養子縁組という形で皇籍取得するのは、いかにも不自然だろう。
しかも畏れ多いが、そうした養子縁組が、未婚の方々のご結婚を困難にする結果になるのは、たやすく予想できるのではないか。更に「女性皇族の子」として皇籍を取得する限り、仮に旧秩父宮家などを継承する形式を採った場合でも、“当主”は養親に当たる女性皇族であり、養子は「女系」と見られるのは避けがたいだろう。
自民党は「『女系天皇』の誕生につながることへの警戒」から対策を講じたつもりが、迷走の果てに行き着いたプランが結局、こんな有り様では目も当てられない。
産経新聞の「誤報」であることを祈る。