皇位継承問題の大詰めが近付いて来た。そこで念の為に、この問題が一先ず決着するまでの、今後の政治プロセスの全体的な見取り図を、示しておく。
現在、政府から有識者会議報告書の提案について検討を委ねられた国会の各政党·会派での意見集約が、ほぼ終わろうとしている。
自民党を含む各政党·会派の意見集約が終わると、→立法府の総意形成を目指す与野党協議が始まる。そこで合意が成立すれば、→その合意をもとに法案が作成され、法案への各党の同意を取り付けた上で、→国会に正式に上程され、全会一致かそれに近い形で、皇室典範の改正か特例法という形式で決着を見る。
およそ以上のような流れを予想できる。
政界は一寸先は闇ながら、大きな変動がなければこれまで繰り返し指摘して来たように、6月23日まで開かれる予定の今国会中に決着するはずだ。男系固執への傾斜が強い維新の会が協議を牽引しようと目論み、決着の前倒しに動いている。
有識者会議報告書が提案した、内親王·女王が婚姻後も皇籍にとどまるものの、配偶者とお子様は国民とするプランと、旧宮家系子孫男性が皇族との養子縁組によって皇籍を取得するプランへの各党の考え方は、立憲民主党と共産党以外はほぼそのまま受け入れようとしている。
立憲民主党は、前者について配偶者とお子様を皇族とするいわゆる「女性宮家」プランと報告書プランの両論併記的なスタンスであり、後者については憲法上の疑義を指摘する。共産党は女性天皇·女系天皇を唱えるものの、恐らくそれを断固として貫く意志も力量もないだろう。
このような政治情勢から判断すれば、安定的な皇位継承に無縁なばかりか、むしろ皇室の未来に暗い影を落とす有識者会議報告書の提案が、そのまま追認される可能性はかなり高い。ここで差し当たり最大の問題は何か。
元々リアリティが薄い旧宮家プランよりも、内親王·女王の配偶者とお子様が国民とされるプランがそのまま制度化される事態だ(私が2月5日のブログで警鐘を鳴らした最低最悪の選択肢⑤)。
前近代では、男女を問わず婚姻による身分の変更はなかった。しかし近代以降、家族は“同一身分”という形に転換した。男性皇族と婚姻した国民女性は皇族になり、国民男性と婚姻した
女性皇族は国民になられた(これは男性の身分と同一になるルールで、背景には男尊女卑の風潮があった)。
しかし今、政府が制度化を目指しているのは、時代錯誤な江戸時代(つまり上記「転換」前!)の皇女和宮の事例を持ち出しながら(歴史への無知を丸出し!)、男性皇族と婚姻した国民女性はこれまで通り皇族となる一方、国民男性と婚姻した女性皇族は皇族の身分のままで、配偶者とお子様は国民、つまり1つの家族の中に皇族と国民が混在する(内親王·女王だけは「皇統譜」に登録され、ご家族である配偶者とお子様は「戸籍」に登録される!)という異常なプランだ。
これがそのまま制度化されると、憲法第1章が優先的に適用される(=日本国及び日本国民統合の象徴で国政権能を否定されている天皇を中心とした皇室を構成する)内親王·女王と同第3章が全面的に適用される(=政治活動·宗教活動·経済活動などの自由·権利が全て保障される)配偶者とお子様が「1つの世帯」を営まれるという、無理で無茶な結果を招く。
厳格であるべき皇室と国民の“区別”を蔑ろにし、皇室の尊厳·「聖域」性を損ないかねず、更に将来における女性天皇の可能性を大きく狭めるおそれがある。
これから始まる国会協議の場で、党内に獅子身中の虫を抱え孤立無援の立憲民主党が、この一線を守る為にどこまで踏ん張れるか(上記ブログの選択肢④)。国民の後押しが必要だ。
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