5月17日、衆院議長公邸で“目先だけ”の皇族数減少抑止策を巡る各党協議=全体会議が開始された。皇位継承問題も差し当たり大詰めの局面に入ったことになる。
安定的な皇位継承を目指すはずだったのに、問題の焦点が平然とすり替えられてしまった。
しかし、政治の場での取り組みは一先ず最終決戦を迎えた。その最前線は全体会議の場そのものだ。
幸い、各党·会派からの出席者の名前が衆院のホームページに公表されている。なので、理解のありそうな議員には国民から応援の声を届けてはどうだろうか。又、今後は関連報道も増えるはずなので、しばらくネット上などで良識ある国民からコメントを示す機会も、恐らく増加するだろう。
それが健全な世論喚起にも繋がる。国民としてやれること、やるべきことはまだまだ残っている。
額賀福志郎衆院議長は、衆参両院正副議長の合意として“今国会中”の取りまとめを目指すことを、明言した。一方、立憲民主党の野田佳彦元首相は「このペースではとても無理ではないか」と述べている。
勿論、これ以上の先延ばしは許されない喫緊の課題だ。しかしテーマの重大さを考えると、野田氏の発言には重みがある。今後は毎週1回のペースで、原則として木曜日に開催するようだ。次は内親王·女王が婚姻後も皇族の身分を保持する案を取り上げるという。
その場合、有識者会議事務局が令和3年11月30日に提出した「事務局における制度的、歴史的観点等からの調査·研究」というレポートで指摘した留意点、未解決の問題点を、慎重かつ丁寧に吟味する必要がある。
同レポートでは内親王·女王の配偶者やお子様を国民とするプランについて、以下の記述があった。
「一般に…(最高裁判決で示されたような)権利·自由の性質に照らすと、政治活動の自由、職業選択の自由等の制約については極めて慎重であるべきところ、皇族の配偶者·子であっても、皇族ではない以上、一般の国民と等しく基本的人権を有するものであり、皇族の配偶者·子であるという理由のみをもって皇族と同様の取扱いとすることは、適当とはいえないのではないか。…
これらを踏まえると、内親王·女王と婚姻した男性やその子の権利·自由について制約しようとすることは、困難と考えられるのではないか」(15〜16ページ)
事務方の報告ゆえ控え目な表現ながら、正確に問題の所在を衝いている。 改めて言う迄もなく、天皇·皇室は憲法上、国政権能が否定されており、又「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」として公正·中立であることが厳格に求められる。
ところが、その皇室を構成する内親王·女王と“一体と見られる”のを避けにくい配偶者やお子様を、政府提案の通り「国民」とするならば、上記のごとく国民としての権利·自由を全面的に認める制度になる。
そのようなプランは、天皇·皇室に対する憲法の要請と真正面から衝突する。天皇·皇室の尊厳、信頼性を大きく揺るがしかねない。従って、とても採用できないと判断するのが、当たり前だろう。最低限、内親王·女王の配偶者やお子様も男性皇族の場合と同じく、国民ではなく「皇族」の身分に位置付けられる必要がある。
追記
5月24日に今月のプレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」が公開予定。
旧宮家プランのこれまで十分に気付かれていない深刻な問題点を指摘する。