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  • 執筆者の写真高森明勅

皇位継承における「正当性」と「正統性」を巡る常識的な考察


皇位継承における「正当性」と「正統性」を巡る常識的な考察

皇位継承の「正統性」は男系だけが支える、という言説を見掛ける。果たしてそうか。


それを吟味する場合、正統性だけでなく、「正当性」という視点も欠かせない。

先ず「正当性」と「正統性」の区別から。


正当性とは道理にかなって正しいこと。こちらは理性に照らして“正しい”と納得できる。


一方、正統性は手順や方法、形式において正しいこと。こちらは感情として“正しい”と受け入れやすい。皇位継承については勿論、これらの正当性と正統性の両方が求められる。これを憲法の条文に即して考えるとどうなるか。


「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」(第1条)たるに相応しい方がその地位に即かれることが、正当性を担保する。一方、それが「世襲」(第2条)という手順、方法でなされてこそ、正統性が保たれる。


その両者を“共に”満たす為に最も望ましいのは、男系継承ではなく「直系」継承であることは、明らかだろう。世襲は元々、男系·女系の双方を包含する概念であり、象徴としての資質を受け継ぎ、より相応しい成育環境を期待できるのは、一般的に傍系ではなく直系だからだ。


なお、憲法の「世襲」規定を女系も含むと解釈したのは平成13年6月8日の衆院内閣委員会での福田康夫·内閣官房長官の答弁からとする珍見解がある(「SPA!」6月18·25日合併号)。


だが、昭和41年3月18日の衆院内閣委員会で関道雄·内閣法制局第一部長が「必ず男系でなければならないということを、前の憲法と違いまして、いまの憲法はいっておるわけではございません」

と明言していた(帝国憲法第2条は「世襲」でなく「皇男子孫」と規定)。


更に遡って、憲法改正案が審議された帝国議会において、憲法担当の金森徳次郎·国務大臣が繰り返し世襲規定が男系男子に限るものでないことを説明していた(昭和21年7月8日、衆院帝国憲法改正案委員会、同9月10日、貴族院同特別委員会)。


追記

プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」は6月28日公開。編集部がつけたタイトルは以下の通り。 



Yahoo!でも配信。


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